先見の目:「これからの日本におけるコーポレートガバナンス」(立石信雄(オムロン株式会社代表取締役会長、2001年)

(訳20年前に書かれました。)「…これまで一般に言われてきた日本企業のコーポレートガバナンスの特徴を要約すると、①内部昇進者による取締役会・監査役会の運営、②企業間の株式持合による安定株主化、③メインバンクによる支援体制、といった点があげられる。これらの仕組みは、敵対的な買収を防止し経営の安定化を促進し、企業の長期的な戦略立案を可能にするなど、日本的経営が成功した要因の一つとして評価されてきた。

しかし、取締役や監査役の大部分が内部昇進者で占められ、社長が両者の実質的任免権を持つことにより、取締役会や監査役が利害関係者の集団にとどまってしまい、企業トップ自身が不祥事に深く関わるような場合には、経営に対するチェック機能が働かないという深刻な問題が浮き彫りになってきた。また、株式持合の進行により、互いの経営内容について口を挟まぬ「物言わぬ株主」を増加させ、資本市場からのチェック機能の不全化も招いた。このような経営のチェック機能の弱体化と併せて、株主の権利の軽視や低い投資収益率についての批判もなされるようになった。

マーサー 「役員報酬サーベイ-Mercer Executive Remuneration Guides 2019」の結果発表

世界最大級の人事・組織コンサルティング会社マーサーの日本法人であるマーサージャパン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役・島田圭子)は、日本における役員報酬に関する市場調査「Mercer Executive Remuneration Guides (以下、MERG) 」(https://www.mercer.co.jp/about-mercer/lines-of-business/information-solutions/mercer-executive-remuneration-guides.html)の2019年版レポートを発表した。

マーサージャパン組織・人事変革コンサルティング部門の井上康晴は、「『日本再興戦略改訂2014』において、「コーポレートガバナンス改革」が成長戦略の最重要課題の一つとして位置づけられて以降、持続的な企業価値の向上にむけた改革が進んでいる。過去最多の企業に参加いただいた前回サーベイに引き続き、今回のサーベイにおいても多くの企業に参加いただいており、政府の方針や市場の動向に対する関心の高さを表していると考えられる」と述べている。

近年、日本においては、コーポレートガバナンスに関する関心がこれまで以上に高まっている。同部門の亀長尚尋は、「2019年12月に改正会社法が成立・公布されるなど、進展するコーポレートガバナンス改革に企業は一層取り組むことが求められている。2018年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにより、先進的な取組を行う企業や充実した開示を行う企業は増加傾向にあり、自社の取組・開示の検討に際しては、市場プラクティスや他社事例は非常に有用である。本サーベイでは、報酬データだけでなく、ガバナンスに関する企業の対応状況やサクセッションプラン(後継者計画)の策定・運用等、時流を踏まえて項目をアップデートしているので、ぜひ活用して頂きたい」と述べている。

調査結果ハイライト

  1. 参加企業数は272社(前年比17社減少)
  2. 日系企業における社長の総直接報酬水準(基本報酬+短期インセンティブ+中長期インセンティブ)の中央値は9,010万円
  3. 日系企業は「役位」を基準に報酬水準を決定する傾向
  4. 過半数の企業が各報酬レベルでターゲット水準ポリシーを定めており、さらにその約50%の企業がベンチマーク企業群における50%ileを自社の報酬水準のターゲットとして設定
  5. 日系企業の74%が中長期インセンティブ導入済み。日系企業の39%が譲渡制限付株式を導入
  6. 諮問委員会(報酬・指名)の設置状況は、報酬委員会が55%、指名委員会は51%となっており、一般的になりつつある
  7. サクセッションプランは、43%の企業が導入済み、30%が導入を検討
  8. 海外子会社の報酬水準を管理・把握している日系企業は74%

宮島英明教授:「物言う株主と企業 経営改善への実効性向上」

経営改善に向けた株主と企業の対話(エンゲージメント)が注目されている。 並行してアクティビストファンドの活動も目立ち始めた。 日本でのアクティビスト活動の実態と今後の可能性を検討したい。 近年の活動の特徴は、 公式の要求を伴うアクティビズムの成功確率は、欧米にはまだ及ばないが、4割に上昇した。また要求が受諾された場合の株式の超過収益率(CAR)は欧米と同程度の約6%となっている。

年金ガバナンス強化のために

コーポレートガバナンス・コードが最大限に機能するために、スチュワードシップ・コードは実効的に機能しなければなりません。 コーポレート・ガバナンス及びスチュワードシップ改革が実効的に機能するためには、一番大事なのは、企業年金基金のようなend asset owner(「経済的資産保有者」)が真のスチュワードになって、専門的な知識をもってfiduciary dutyを貫くことであります。

取締役候補者からのキリンHDの株主へのメモ

インデペンデントフランチャイズパートナー(IFP)は、菊池 加奈子氏(経験豊富なグローバル製薬幹部)と私を独立社外取締役として指名する株主提案をキリンホールディングス(KH)に提出しました。Glass Lewisは二人の選任を支持していますが、ISSは中途半端な「妥協」をして菊地氏の人材価値を認めながら、どういうわけか私だけを支持しているようです。

ですが現実問題として、投資家が菊地氏を支持してくだされば、取締役会がキリンホールディングスの企業戦略について十分な業界知識・情報・分析に基づいた客観的かつ独立した継続的評価を実際に行う確率が高くなります。このような客観的な評価はキリンホールディングスの将来価値向上には不可欠でしょう。

二人ともIFPとは以前から関係は一切なく、IFPの他の株主提案とも関係がありません。それらの提案については、中立的・独立した姿勢をとっています。 株主が配当提案を支持しない場合、我々が取締役会に参加し、質問できる状態になり、内部分析および機密情報が明らかになるまで、戦略に関する決定を保留することが最も賢明であると考えています。したがって、すべての事実を知る前に事前に決定することなく、二人は取締役会に参加するーこれが、真に独立した取締役として取ることができる唯一の論理的な方法です。私の個人哲学と法的義務はすべての株主に答えることであります。IFPがこれまでに取った、あるいは将来取る可能性のある立場に同意できない可能性があることはIFPに明確な形で伝えています。 IFPはこれで問題はないとしています。(もちろん、逐一IFPの「許可」を得る必要は全然ありませんが。)

多くの投資家は、今こ菊地氏の知識および経験が必要とされているのにも関わらず同氏が選任されなければ、取締役会にグローバルなバイオファーマ企業で経験を持つ人が一人もいないことに気付いていないかもしれません。キリンホールディングスはヘルスサイエンス・バイオファーマなどの分野へ事業の多角化を目指す成長戦略を考えれば、この状況は賢明ではなく、私にとって大きな懸念です。

大和総研: 独立取締役の選任状況と ROE、ROA との関係~積極的に選任を進めている企業の ROE や ROA が高い~

2019年11月26日、大和総研政策調査部・主任研究員の伊藤正晴氏によるレポート「独立取締役の選任状況と ROE、ROA との関係」が公表された。このレポートによると、独立取締役の選任状況と ROE や ROA との関係を分析すると、独立取締役を複数名選任している企業群や独立取締役の積極的な選任を進めている企業群の ROE や ROA が高いとの結果を得た。また、独立取締役の選任を積極的に進めることが ROE や ROA の上昇と関係している可能性を示唆する結果も得られた。
これらの結果は、独立取締役の選任状況と ROE や ROA の因果関係を示したものではないが、独立取締役の選任が企業価値の向上につながることや、企業価値の向上に資する経営を行っていることの指標の 1 つとして機能していることを示している可能性がある。

日本のコーポレート・ガバナンス~この3年で何が変わった?~

私は最近、この質問に答えるプレゼンテーションを行いました。結論は次の通りです。

  • 投資家は議決権行使によって意思表示
  • 投資家の要望の声が必要
  • 「政策保有株」の壁を取り壊す方法がある
  • 優れたパフォーマンスと相関関係が優位な要因> =独立取締役、政策保有株が少ない、15%を超える女性取締役、および企業年齢が45歳未満
  • アクティビズムはより効果的になっている

これらの結論は、私たちが収集した膨大な量の時系列データに基づいています。現在、財務データだけでなく、有価証券報告書およびコーポレートガバナンス報告書のテキストおよび数値データ、および議案別に集計された株主総会(AGM)の議決権行使結果データを含む包括的な時系列データベースを構築しています。データベースは、必要なデータに直ぐいアクセスできる形になります。以下は、取締役の会構成およびその他のパラメーター(委員会等)、過去のAGMの議決権行使比率とCEOの再選任議案の支持率、および「政策保有株」の保有残高傾向を示す簡単な例です。

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このデータベースを利用すると、まもなく時系列統計分析を実行できるようになります。

馬を水辺に連れて行くことなのか -日本のコーポレートガバナンス・コードの展望 – by John Buchanan

この論文は、2019年春版(Vol.24)に、日本法ジャーナル(Zeischschrift für Japanisches Recht)によって掲載されました。ここでは、その編集長のご厚意により複製しています。

【概要】

2014年から2015年にかけて、日本のコーポレートガバナンス体制に一連の改革が実施されました。
主な改革は、初めて導入されたコーポレートガバナンスコード、また会社法の改正、スチュワードシップコード、および企業の競争力と成長へのインセンティブをまとめた報告書「伊藤レポート」などです。

本レポートでは、これらの改革の目的を分析し、成功の可能性を評価しています。

レポート全文:馬を水辺に連れて行くことなのか -日本のコーポレートガバナンス・コードの展望-by John Buchanan

このフォーラムへは、論文の著者の一人であるジョン・ブキャナンの依頼で投稿しています。

BDTI/METRICAL共同研究アップデート:「CGプラクティスと価値創造のリンケージ」-2019年7月-

BDTIとMETRICALは、「CGプラクティスと価値創造のリンケージ」を共同研究しているが、このほど時価総額約100億円超の約1,800社の上場会社について2019年7月末の分析結果をアップデートした。ちなみに、今回の分析データは2019年3月期決算後の有価証券報告書提出後のデータを用いていることから、3月決算会社のボードプラクティスの変化の多くを含んでいる。

本分析では、CGプラクティスをボードプラクティスとアクションに分けて考えた場合、ボードプラクティス(取締役会の運営体系)とアクション(実際の企業行動)が価値の創造の指標とされるROE,
ROA, トービンのqと有意性のある相関があるかを分析している。

メトリカル:決算発表が相次いだ5月、CG Top20株価はややアンダーパフォーマンスで終える、取締役会の議長についての考察

取締役会の議長

今月は取締役会の議長に注目してみたいと思います。
約1,800社の中で取締役会の議長を社外取締役が勤めている会社はわずかに27社しかありません。取締役会の舵取りを社外の取締役(独立取締役でない場合も含む)に託すというのは、どれだけ抵抗があることかみて取れます。下記がその27社です。