コーポレートガバナンスについて思うこと
2026年9月1日 竹内康雄
日本でコーポレートガバナンスの必要性と重要性が一般的に認識され出したのは、2015年のコーポレートガバナンスコード策定からで、たった11年前のことであるが、それ以前の企業経営者は自社のガバナンスを全く無視していた訳ではないのは当然のことである。但し、当時はガバナンスに関する理解と実践は自分達なりのもので、コーポレートガバナンスコードの発行により、体系的に理解し実践しチェックできるようになった。以来、「ガバナンスが効いていない」という表現を一般的に見聞きするようになったと思われる。
私が勤務したオリンパスは2011年に当時の一部経営者による会計の不祥事を起こし、それにより多くのステークホルダーに多大なる迷惑をかけてしまった。その後同社の経営の中心を担った身として、社会全体でのコーポレートガバナンス強化の動きは、立て直しが必須である同社における自分の役割にとって力強いフォローとなった。
コーポレートガバナンスという表現が一般的になる以前より、私自身は企業がサステイナブルに成長する為にはどのような統治機能やシステムが必要か考えてきた経緯がある。特に日本の企業は多くが終身雇用をベースに年功で運営されてきたことで、統治が十分に機能しないリスクがあると考えていた。自分の周囲を見ても職場の中でそれは強く感じられた。若い時も中堅の時もそれぞれの立場でしっかりとした統治をできるようにすることを常に意識してきた。後に自分がCEOとして企業変革を企画し実践できたのも、この若い時からの経験が大いに役に立った。
繰り返しではあるが、私はコーポレートガバナンスとは「企業がサステイナブルに成長するための総てのこと」だと捉えている。特定の個人や組織が実行するものではなく、企業全体を対象にひと・もの・金が最大限に有効活用できる仕組みを整備し、それをチェックし必要な改善を施せるようにするシステム全体を機能させることだと考えている。当然執行陣が実践し取締役がそれをチェックできるようになる必要がある。
私がCEOに就任した際にアクティビスト投資家を取締役に招聘したが、それは執行陣をモニタリングする取締役会全体の多様性を高め、それによりガバナンスの強化に繋げ会社の発展に資するためだった。あるいは経営者の価値観としてはアクティビスト投資家が取締役になると「やり難くなる」と捉えるかも知れないが、会社の成功確率を高めるためには厳しい指摘をしてくれる「経営者の指導役・サポーター」の存在は欠かせない。コーポレートガバナンスは企業経営の守りが目的ではなく、諸環境が変化する中で成長に打って出る攻めが目的だと捉えると少し見方が変わるかも知れない。
以上
元オリンパス代表執行役CEO、会長