用語集

この用語集は、社外取締役がその役割を理解するために一般的に参照することを想定してごく大まかな説明をすべく、BDTIの代表理事ニコラス・ベネシュが編纂したものである。正確性よりも分かりやすさを優先した箇所があるし、例外や適用除外について立ち入っていない箇所もある。この用語集は法律的アドバイスを提供するものではないし、個別ケースの解決に使用されるべきものではない。

所有と経営の分離
株式会社の所有者たる株主と、会社の経営者が分離していることを指す。

エージェンシー問題
委託者(プリンシパル)が代理人(エージェント)に業務を委任する関係をエージェンシー関係と呼ぶ。エージェンシー関係においては、委託者と代理人の利害が一致しないことがあり、委託者の利益が害されることがある。これをエージェンシー問題と呼ぶ。

株主の利益最大化の原則
会社は利益追求団体であり、その究極の目的は、株主利益を最大化することにある。取締役の善管注意義務も株主利益を最大化することが基準となる。会社の業務に関係する者(ステークホルダー)は、株主以外にも従業員、取引先等多く存在する。その中でも、株主の利益最大化が原則となるのは、従業員や取引先といった債権者の請求権は優先して回収されるのに対し、株主には劣後した残余財産請求権しかないことが理由とされる。株主が分配を受ける残余・余剰部分が会社の営利追求活動によってもたらされた社会の富である。だから法律は、社会の富を最大化するために、株主の利益を最大化することを原則とするのである。

株主の利益最大化の原則は、常に例外のない厳格な原則ではない。株主利益のためであるからと、債権者をないがしろにする経営を行えば、結局は従業員や取引先から見放され、会社の利益追求は成功しないだろう。また製品の安全性や環境を軽視した経営を行えば、顧客や社会から拒絶される。これらを考えれば、株主の利益最大化の原則が緩やかなものであることが、よく分かる。

近時、株主の利益最大化の原則と対立する概念として、企業の社会的責任論やステークホルダー利益への配慮が強調されることがある。企業の社会的責任や、ステークホルダーへの配慮は、重要である。しかし、それを強調し過ぎれば、経営者の裁量権を肥大させ、エージェンシー問題を拡大させる危険もあり、注意が必要である。

コーポレートガバナンス
企業においてエージェンシー問題を解決するため、経営者を監視監督する仕組みである。東証の2018年発表コーポレートガバナンス・コードでは、コーポレートガバナンスとは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み、とされる

機関設計
企業が選択する統治構造を意味する。選択肢として、どのような会議体を設置するか、いかなる役割を持った取締役を任命するか等、がある。特定の統治構造を押し付けず、各企業が最適なものを自ら選択できるように複数の選択肢を規定していることが、日本会社法の利点と考えられている。企業が選択する機関設計によって、また株主の多さ(公開会社か否か)によって、企業の規模(大会社か否か)によって、会社法が要求する企業の体制や取締役の義務は細かく異なるので、自らの置かれた場合にはどうであるか、取締役には注意が必要である。

主な上場企業は、以下の3つのうちいずれかの機関設計を選択している。すなわち(a)監査役会設置会社、(b)指名委員会等設置会社、(c)監査等委員会設置会社である。(b)指名委員会等とは、指名委員会、報酬委員会、監査委員会の3つの委員会を指す。日本の上場企業がとる選択肢として、(a) 監査役会設置会社が一般的であり、新しい選択肢である(c)監査等委員会設置会社も増えているが、(b)指名委員会等設置会社は非常に少ない。(c)監査等委員会とは、監査を行う他、報酬・指名についての同意も行う委員会である。法定の機関の他に、各企業が任意に委員会を設置する統治構造もある。(a)監査役会設置会社が、法定ではない任意の機関として、指名諮問委員会、報酬諮問委員会を設置することが多い。取締役会から指名や報酬について諮問を受け委員会が意見を答申する、取締役会は意見を参考にする、という形式で機能する。

大会社
資本金5億円以上、又は負債200億円以上の企業である。企業は、大会社とそれ以外の会社に分かれる。

公開会社
発行株式の一部についてでも、定款で譲渡制限を定めていない企業である。発行株式の全部について、定款で譲渡制限を定める企業のことは、全株式譲渡制限会社と呼ぶ。

専決事項
各会議体や取締役に割り振られた決定権限を指す。専決事項は、他の会議体や人物が決定することはできない。

会社法が定める株主総会の専決事項には、次がある。定款変更、合併、会社分割、株式交換、事業譲渡、減資のような会社の基礎的な事項、取締役等の選解任、計算書類の承認、剰余金の処分や第三者に有利な募集株式の発行のような株主利益に関する事項、取締役報酬のような取締役等の専横の危険のある事項である。これらの株主総会専決事項は定款をもってしても、変更することはできない。アメリカでは、取締役報酬に対する株主総会におけるsay-on-pay投票に拘束力はない。日本では株主総会が取締役報酬総額上限額を決定し、取締役会が個人別の配分を決定する。取締役会が特定の取締役に配分の決定を一任することは妨げられない。

会社法が定める取締役会の専決事項は次のように多岐にわたる。重要な財産の処分、多額の借財、重要な使用人の選解任、支店その他重要な組織の設置、社債募集、(グループ)内部統制システムの整備、役員責任の免除、それらと同様の重要な業務執行、種類株式の内容、譲渡制限株式や譲渡制限新株予約権の譲渡承認、自己株式の取得価格、取得条項付株式の取得、特別支配株主の株式等売渡請求の承認、株式の分割・株式無償割当て、所在不明株主の株式の競売、募集株式・新株予約権の募集事項、株式振替制度、総会招集、代表取締役の選定、監査役設置会社以外のおける取締役・会社間訴訟の会社代表者の決定、競業取引・利益相反取引の承認、計算書類・事業報告・附属明細書の承認、株式発行と同時に行う資本金・準備金の減少、中間配当、一定の要件を満たす会社における剰余金の配当など。

専決事項は会社法が定めるものであり、基本的には下部組織に権限を委譲することはできない。各企業が定款で定めれば、株主総会の決議事項とすることはできる。取締役会の専決事項が多く、取締役会が決議に追われることも多い。特に、多額の借財、重要な使用人の選解任、支店その他重要な組織の設置について、「多額」「重要」の定め方によっては、取締役会が頻繁にこれら議題を取り扱うことになる。

権限の委譲
取締役会から代表取締役その他の業務担当取締役、執行役、執行役員等に決定権限を譲り渡すことを指す。法定の専決事項について権限の委譲をすることはできない。しかし、専決事項について「多額」「重要」の意味を狭くすれば、それだけ広くなった「多額ではない」「重要でない」事項について権限を委譲することができる。しかし、会社法が取締役会の専決事項とした趣旨を逸脱するような委譲がされないよう、注意が必要である。権限の委譲の必要性は、次のような場合に出現する。取締役会の開催日を待たず、迅速に決定して機動的な経営を行う必要がある。取締役会が多くの決議事項に追われ、戦略を議論する時間がないため、時間を捻出するために、権限の委譲をする必要がある。

虚偽記載(金商法)
開示書類中の重要な事項について真実でない記載又は不記載をすることを指す。金融商品取引法は、企業に各種開示書類を財務省所管の地方財務局(例:関東財務局)に提出を義務付ける。金商法は、株式市場の秩序維持と投資家保護を目的とし、上場企業の開示情報を規律する法律である。投資家は、財務局が提供するEDINETを通じて開示書類を閲覧して、投資判断に役立てることができる。閲覧が可能な状態を「公衆縦覧」という。開示書類には、有価証券報告書、四半期報告書、有価証券届出書、内部統制報告書、経営者確認書、臨時報告書、自己株券買付状況報告書、親会社等状況報告書、訂正報告書等がある。開示書類の重要な事項に虚偽記載があれば、刑事、行政、民事上の責任を問われる。

虚偽記載の行為者に科せられる刑罰は、10年以下の懲役、1000万円以下の罰金又はそれらの併科、5年以下の懲役、500万円以下の罰金又はそれらの併科等申告ある。行為者に加えて企業には7億円、5億円等の罰金が科せられる。虚偽記載のある開示書類を提出した企業に課せられる課徴金は、法律が定める計算式に従って計算される。処分がなされる前に虚偽記載を報告することで、課徴金が減算されるリニエンシー制度がある。虚偽記載のある開示書類を提出した企業、企業の役員が投資家に対して負う民事責任は、端的に整理すれば、詐欺という不法行為から生じた損害を賠償する責任である。民法と比べ、金商法は、過失についての立証責任の転換、損害賠償額の推定を規定し、投資家保護が厚い。投資家から提訴される損害賠償請求事件にクラスアクション制度はないものの、原告側弁護団の活動は活発であり、多くの投資家を組織して共同訴訟が提起される。被告となる企業、役員ともに訴訟活動には困難が伴う。

取締役会の役割
取締役会メンバーを指名し、経営陣を選任、解任、監視監督することで、原則として、企業の戦略やリスク管理を方向付けることにある。法律は取締役会の専決事項を定め、一定の重要事項は取締役会が決定することを求めるが、その事項や範囲は、企業が選択し定款に定める機関設計により異なる。取締役会による監視監督を受けるため、取締役は3ヶ月に1回以上、自らの職務執行の状況を取締役会に報告する義務がある。多くの上場企業の取締役会は毎月開催されている。

ある取締役が、他の取締役からの報告では不足があり、会社の業務・財産を調査する必要があると考える場合、ある取締役が単独で調査権を行使できるかについては、否定的に考えるのが日本での通説と考えられている。取締役会による監視監督であるから、取締役会を通じて調査権を行使する必要があるため、取締役会決議を経る必要がある。

取締役会議事録
書面・電磁的記録で作成され、主に議事の計画の要領と結果が記載される。出席した取締役及び監査役は、署名又は記名押印・電子署名する必要がある。議事録に異議を留めない取締役は、その決議に賛成したという推定が働く。

取締役の義務
「取締役」は、株主総会によって選任され取締役会のメンバーであり、会社法の定める義務を負う。会社法の定めによれば、取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない(会社法355条)。これを英米法における取締役責任と重ね合わせ、ごく大まかに整理すれば、次のように説明することができる。取締役は株主からの受託者として、受託者責任(fiduciary duty)を負う。受託者としての取締役は、(a)企業による法や規制の遵守を確実にすること(duty of care)、(b)自己の利益を企業の利益より優先させないこと(duty of loyalty)が求められる。

会社法のおける取締役の義務は、忠実義務と総称される(民法における善良なる管理者としての注意義務と同義である)。しかし、個別具体的な事象の中で取締役が何をするべきか、あるいは何をしないべきか、忠実義務の内容は明確ではない。しかし、忠実義務を細分化して取締役の行動規範を定める会社法の条文(競業避止義務、報告義務等)もある。会社法の条文は、企業が選択する機関設計ごとに異なる文言を定めるので、注意が必要である。

取締役の競業避止義務
取締役が自己又は第三者のため、会社と競業する取引をするときは、取締役会承認を受ける義務がある。競業とは、会社が行う取引と、商品・サービスが競合し、かつ市場も競合する取引である。競合会社が、会社の完全親会社、完全子会社の場合は、利害対立がないので、心配する必要はなく、承認は不要である。承認を受けて競業取引を行った取締役は、取引後遅滞なく、当該取引の重要な事実を取締役会に報告する義務がある。取締役会による承認は、取引実行を可能にするだけで、競業取引に関わった取締役を免責するものではない。競業取引で会社に損害が生ずれば、善管注意義務を怠って損害を発生させた取締役は、損害賠償責任を免れない。日本では、ある会社の取締役が系列会社の代表取締役となって、競業取引を行うことも多い。そのような場合、競業取引は会社の利益のために行われることも多く、たとえ結果として会社に損害が生じても、取締役に善管注意義務違反はないと判断されることも多いだろう。しかし、創業者である取締役が専横的に競業取引を行い、取締役会は盲目的に承認し、会社に損害を発生させる事例もあるので、やはり注意が必要である。

取締役の利益相反取引
取締役の利益相反取引には2種類ある。取締役が自ら当事者となって、又は第三者の代理人として、会社との間で財産を売り買いしたり金銭を貸し借りしたりする直接取引と、会社が取締役の債務を保証するような間接取引とがある。いずれも、会社と取締役が、こちらが得をすればあちらが損をする関係に立つ取引である。取締役が会社と利益相反取引をするときは、取締役会の承認を受ける必要がある。承認を受けて利益相反取引を行った取締役は、取引後遅滞なく、当該取引の重要な事実を取締役会に報告する義務がある。取締役会による承認は、取引を有効にするだけで、利益相反取引に関わった取締役を免責するものではない。利益相反取引で会社に損害が生ずれば、善管注意義務を怠って損害を発生させた取締役は、損害賠償責任を免れない。

関連当事者との取引
取締役は、会社の関連当事者であり、会社と関連当事者との間の取引は、一定の場合に、計算書類や財務諸表の注記上で開示が必要となる。関連当事者とは、当該会社の取締役の他、主要株主、親会社の役員や重要な子会社の役員、その近親者等も含むかなり広い意味を有するため、関連当事者との取引を漏れなく開示するために、会社は相当の注意を払っている。しかし、ときに開示もれの事件が起きることがある。取締役が取引情報を正しく会社に知らせること、会社にチェック体制が整っていること、両方が必要である。

取締役から取締役会への報告義務
取締役は、株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を

 ・ 株主に
 ・ 監査役設置会社にあっては、監査役
 ・ 監査役会設置会社にあっては、監査役会に
 ・ 監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員会に

報告しなければならない。

忠実義務の一環として、取締役にはこのような報告義務がある。報告は監査権限を持つ者に伝達するのが、法律のデザインである。しかし、具体的な「著しい損害」とはどれほど多額なものか、「事実」の「発見」とはどれほどの裏付けを要するのか、条文はやはり明確ではない。個別具体的な事情の中で、忠実義務の意味を追求し、各取締役が判断することが求められる。取締役は、報告対象事項をこれら監査権限を持つ者でなく、取締役会に報告することはできるか。法律に規定がないため、この点は広く語られていない。しかし、取締役は、取締役会のメンバーであり、報告が適切と考える事項を取締役会に報告することは妨げられないし、忠実義務の一環であると考えるべきである。

会社法381条2項によれば、監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。監査役の調査権限には制約がなく広範であり、子会社の業務及び財産の状況を調査することもできる。会社法施行規則105条は、監査役が取締役と意思疎通し情報収集に努めること、取締役又は取締役会は監査役の職務執行に必要な体制整備に留意することを求める。

しかし、現実には、定例的な事業報告徴求はなされるものの、監査役の調査権限はあまり発揮されていない。監査役が何らか調査の端緒を発見すれば、会社法が監査役に付与する広範強大な権限により、強力な調査が可能である。しかし、現実世界では監査役の地位や役割は軽視されている。調査を前提に監査役選任はなされていないし、企業内に監査役調査に協力する意識や環境も整っていない。不祥事が発覚し、経営トップの関与や経営トップの責任問題への発展が疑われる場合、第三者委員会が組織されるのが、今日の慣例となっている。第三者委員会は、企業と利害関係を持たず、不祥事に関し適当な専門知識を持つ者が調査を担当する制度である。しかし、第三者委員会を選定起用するのは、監査役であることもあるが、大抵の場合は経営トップである。第三者委員会は、これまで機能して来なかった監査役調査を代替するものであり、監査役調査がこれから機能することを遅らせるものであると、捉えることもできるだろう。

監査役から取締役会への報告義務
監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を

 ・ 取締役
 ・ 取締役会設置会社にあっては、取締役会

に報告しなければならない。

取締役の秘密保持義務
取締役には企業の秘密を秘密に保つ義務がある。この秘密保持義務は会社法に定めはないものの、忠実義務の一端であることには、異論がない。取締役は、企業経営の中枢に入り込み、公開でない内部情報を知る立場に立つ。それを漏洩して、企業の競争上の優位性を脅かしたり、M&A交渉を阻害したり、インサイダー 取引に関係することは、許されない。取締役の秘密保持義務違反に該当するのではないかと、問題が先鋭化するのは、公益通報の場合である。取締役が違法行為を取締役会に報告できない、又は報告しても是正がなされない場合、取締役は監督官庁や報道機関への公益通報が必要となることがある。この公益通報が、企業秘密の漏洩にあたるとして、執行側が反発することがある。公益通報者保護法改正案(2020年4月現在)は、公益通報を理由として企業が役員に損害賠償請求することを禁じる。法改正がなされる以前も、企業が役員に損害賠償請求した場合には、企業は不法行為の成立要件を主張立証する必要があるところ、役員には違法行為がない、あるいは故意過失がない等、成立要件が整わないことにより、損害賠償請求は棄却されると解されるのが合理的である。

取締役会の委員会・諮問委員会
「取締役会の委員会」には、法律が設置を要求する委員会と、企業が任意に設置する(諮問)委員会がある。指名委員会等設置会社という機関設計を選択した企業には、社外取締役が過半数を占める、指名、報酬、監査委員会という三委員会の設置が求められる。監査等委員会設置会社という機関設計を選択した企業には、社外取締役が過半数を占める、監査等委員会の設置が求められる。

指名委員会
指名委員会は株主総会に提出する取締役の選解任議案を決定する。執行役の選解任は、執行役に対する監督権限の一部として取締役会が行うため、指名委員会は行わない。取締役候補者の原案は代表執行役が提案することが多いであろうが、社外取締役が議論・決定に加わることにより、透明性・合理性を確保することが重要である。委員会の職務執行は、取締役会に報告される。

報酬委員会
報酬委員会は、執行役、取締役が受ける個人別の報酬等の内容を決定する権限を有する。個人別の報酬等は、確定額のこともあれば、計算方法であることもある。執行役が使用人を兼任する場合、報酬委員会は、使用人部分も決定できる。報酬委員会は、決定を代表執行役に一任することはできない。

監査委員会
監査委員会は、執行役等の職務執行を監査する。監査委員過半数は社外取締役であることに加え、監査委員全員が、執行役、使用人、子会社の業務執行取締役、執行役、使用人であってはならない。監査役と監査委員の監査方法はかなり異なる。監査役は自ら監査業務を行うことが多いが、監査委員は内部統制部門を通じて監査を行う。内部統制システムは取締役会が構築し、その構築・運営を内部統制部門を通じて監査するのが監査委員会である。

監査等委員会
監査等委員会は、取締役の職務執行を監査し、取締役の選解任、報酬について意見を決定する必要があり、株主総会でそれを陳述する権限を持つ。監査等委員過半数は社外取締役であることに加え、監査等委員全員が、業務執行取締役、使用人、会計参与、子会社の業務執行取締役、執行役、使用人、会計参与であってはならない。監査等委員に常勤者を置く必要はない。監査等委員会が行う監査は、指名委員会等設置会社における監査委員会と同じく、内部統制システムを利用する形式である。

第三者委員会
第三者委員会は、企業不祥事が発覚した場合に、原因究明のために企業が任意に設置する機関であるが、会社法が定めるものではない。経営上層部の関与、組織ぐるみの不祥事が疑われ、社内調査では原因究明に不安がある場合に、弁護士、公認会計士等の専門家で、企業から独立した立場にある者が任命される。独立性を確保するための要件等については、日本弁護士連合会が定めた「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」がある。ガイドラインの遵守・不遵守のいかんを問わず、原因究明が不十分である、経営陣に手心を加えたのではないか、として批判される調査結果報告書が多い。

特別取締役
特別取締役とは、取締役会決議事項のうち日常的頻繁に起きる事項について迅速に決議するために、予め取締役会で選定された取締役である。取締役が6人以上、社外取締役が1人以上、いずれの要件も満たす取締役会は、重要な財産の処分・譲受、多額の借財について、3人以上の特別取締役を選定し、彼らに決議を委任することができる。

特定取締役
特定取締役とは、監査報告を受け取るべく指定された取締役であり、監査報告を通知するべく指定された特別監査役から、監査報告の通知を受け取る。

特別利害関係取締役
特別利害関係取締役とは、取締役会に付議された議題について特別な利害関係を有する取締役であり、議決に参加することはできない。

社外取締役
「社外取締役」は、大まかにはその企業の従業員出身でない取締役であるが、より詳述すれば、会社法が定義する次のような要件を全て満たす者である。

 1) 現在も、就任前10年間も、会社(子会社も含む)の業務執行取締役、執行役又は使用人でなく、
 2) 就任前10年間に、会社(子会社も含む)の取締役又は監査役であったこと(当該職)があるなら、当該職への就任前10年間に会社の業務執行取締役、執行役又は使用人でない
 3) 会社の親会社(自然人を含む)の取締役、執行役、使用人でなく、
 4) 会社の姉妹法人の業務執行取締役、執行役、使用人でなく、
 5) 会社の取締役、執行役、重要な使用人又は自然人である親会社等の配偶者又は2親等内の親族でない。

社外取締役は、エージェンシー問題を軽減するためのキーパーソンであり、その要件は詳細に定められ、その設置が強く求められる。事業年度末に、監査役会設置会社、公開会社、大会社、有価証券報告書提出会社全てに当てはまる会社が、社外取締役を置いていない場合、置くことが相当でない理由を定時株主総会で説明する必要がある。理由は、原則として、事業報告や株主総会参考書類にも記載する必要がある。社外取締役の除外要件中に、親会社や主要取引先の業務執行者、多額の報酬を受領する専門家が含まれていないことには注意が必要である。

独立取締役 (概念と現実、CGコードとの関係)
独立取締役は、東京証券取引所が、上場規程で定める「独立役員」の要件を満たす取締役である。東証は、独立役員を、一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役とする。会社法の定める社外取締役又は社外監査役会以上に、「一般株主と利益相反が生じるおそれのない」という要件が加わり、より厳格であると言える。東証は「一般株主と利益相反が生じるおそれのない」者であるか否かは、上場会社が自ら判断するものとしながら、上場管理等に関するガイドラインにおいて、次のような独立性基準を定め、判断を促す。

 A. 上場会社を主要取引先とする者又はその業務執行者
 B. 上場会社の主要取引先又はその業務執行者
 C. 上場会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会計専門家又は 法律専門家
 D. 最近においてA、B又はCに掲げる者に該当していた者
 E. 就任前10年以内に次の(A)から(C)までのいずれかに該当していた者
  (A) 親会社の業務執行者又は業務執行者でない取締役
  (B) 親会社の監査役(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。)
  (C) 兄弟会社の業務執行者
 F. 次の(A)から(H)までのいずれかに掲げる者(重要でない者を除く。)の近親者
  (A)  AからEまでに掲げる者
  (B)  会計参与(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。)
  (C)  子会社の業務執行者
  (D)  子会社の業務執行者でない取締役又は会計参与(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。)
  (E)  親会社の業務執行者又は業務執行者でない取締役
  (F)  親会社の監査役(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。)
  (G) 兄弟会社の業務執行者
  (H) 最近(B)乃至(D)又は業務執行者(社外監査役を独立役員として指定する場合は、業務執行者でない取締役を含む。) に該当していた者

東証が定める上場規程は、独立役員を少なくとも1名以上確保する義務を定める。東証が定める上場規程は、取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保する努力義務を定める。東証が発表するコーポレートガバナンス・コード(2018年6月版)【原則4-8】は、独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきとする。また諸般事情を勘案して、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役の選任を必要と考える会社は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきとする。コーポレートガバナンス ・コードは、3分の1以上を実質的な目標として設定したと考えるべきである。

筆頭独立社外取締役
筆頭独立社外取締役とは、社外取締役が複数いる場合に、互選により定められることがある筆頭者であるが、法律上の用語ではない。東証が発表するコーポレートガバナンス・コード(2018年6月版)【補充原則4-8②】は、筆頭独立社外取締役について、経営陣との連絡・調整や監査役又は監査役会との連携をその役割としている。多くはないが、筆頭独立社外取締役が、投資家との対話を行う例もある。

代表取締役
代表取締役は会社法上の概念であり、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する取締役である。代表取締役が契約締結等の対外的行為をすれば、会社を代表する行為となって、会社は契約の法的効果に拘束される。企業の業務執行者のトップは、会社法の用語ではない「社長」や「CEO」という肩書が付されることが多い。代表取締役と社長は一致するのが一般的である。彼らの名刺には「代表取締役社長」と記載される。取締役会設置会社では、取締役会が過半数決議により、代表取締役を選定及び解職する。代表取締役は複数でも良い。

取締役会の議長
取締役会の議長は、議題を紹介し、議論を促し、採決するという取締役会の議事進行を行う取締役である。議事進行によって、取締役会における審議の幅や深さが変わりうるため、議長の役割は重要である。しかし、会社法は議長を含め、取締役会の議事に関する規定をしない。取締役会の議長は、定款・取締役会規程等により、代表取締役社長が指名されるのが通例である。最近、コーポレートガバナンスを従事する企業で、社外取締役を取締役会議長とする例があるが、稀である。

会長
会長とは、企業の業務執行者に付される肩書であり、法律用語ではない。取締役に付されることが多く、そのような場合は、取締役会会長、取締役会長と呼ぶこともある。しかし、取締役会の議長には代表取締役社長が指名されることが一般的であり、会長は取締役会の議長ではないことが多い。また、取締役でない者に会長という肩書が付される場合もある。名誉会長という肩書が付されることもあり、そのような場合は付された者はもはや取締役でないことが多い。

代表取締役社長であった者が、社長を退任した後に会長になることがよくある。代表取締役であり続ける場合もある。代表取締役でない場合でも、取締役会長という肩書を持った者を、代表権を持つと誤解して善意の第三者が契約締結等した場合は、会社は責任を負い、法的効果に拘束される。社長を退任した者を会長として社内に残す実務は、業務執行の連続性の維持に役立つという利点もあるが、リーダーシップが不明確になる、過去と断絶した業務執行を行いづらいという欠点が発生することもある。

社長
社長とは、企業の業務執行者のトップに付される肩書であり、法律用語ではない。社長ではなく、米英の実務を参考に、「CEO」という肩書に変える日本企業もあるが、「CEO」も法律用語ではない。社長やCEOは、取締役会設置会社では代表取締役と、指名等委員会設置会社では代表執行役と、一致するのが一般的である。

社長
副社長とは、企業の業務執行者のセカンドトップに付される肩書であり、法律用語ではない。大抵の場合、副社長は専務取締役よりも上位者である。

専務取締役
専務取締役とは、企業の業務執行者に付される肩書であり、法律用語ではない。大抵の場合、副社長よりも下位、常務取締役より上位である。会社法上の代表取締役ではないことが多い。

常務取締役
常務取締役とは、企業の業務執行者に付される肩書であり、法律用語ではない。大抵の場合、専務取締役より下位、役付でない平取締役より上位である。会社法上の代表取締役ではないことが多い。

執行役
執行役とは、会社法が定める機関であり、指名委員会等設置会社において、業務執行者として取締役会決議により選任された者である。業務執行の決定や、業務執行を行う。執行役は、取締役と同じく、職務執行につき善管注意義務ないし忠実義務を負う。株主代表訴訟、株式交換等完全子会社の旧株主による責任追及訴訟、最終完全親会社等の株主による特定責任追及訴訟の被告となる。

代表執行役
代表執行役とは、指名委員会等設置会社において、執行役が二人以上いる場合に、取締役会決議で選任され、会社の業務に関する一切の裁判上、裁判外の行為に及ぶ包括的な代表権を有する者である。会社が与える肩書は、業務執行者のトップを示す「社長」や「CEO」であるが、これらは法律用語ではない。

執行役員
執行役員とは、監査役会設置会社又は監査等委員会設置会社において、企業が業務執行社に与える肩書であって、法律用語ではない。執行役と似ているが、執行役は、指名委員会等設置会社のおける会社法が規定する機関である点で、異なる。執行役員は、企業のヒエラルキーの中では取締役に次ぐ地位にあり、取締役会の決定を執行する取締役を支援する役割を持つ。取締役と兼任する者もいる。執行役員と会社との間で締結される契約は、委任契約であることもあるが、雇用契約であることが一般的である。雇用契約における従業員は、受託者ではなく、会社法上の忠実義務を負わず、このため株主代表訴訟の被告にはならない。

監査役
監査役とは、取締役会設置会社において会社法上設置が要求される、取締役の職務執行を監視する機関である。監査業務を大別すると、会計監査と業務監査に分けられる。監査役がする業務監査は、原則として違法性監査に限られ、妥当性監査には及ばない。このため、取締役の職務執行に違法性がない限り監査役は意見を差し控えるべきだ、と監査役の活動範囲を限定づける考え方には、注意が必要である。取締役の妥当でない業務執行が一定限度を超えれば善管注意義務違反として違法になるため、監査役は不当性を監視する必要があるためである。また、監査役から取締役会への報告義務の対象には、法令・定款違反だけでなく、取締役による不正の行為や著しく不当な事実も含まれる。

監査役は株主総会の決議によって選任され、解任には特別決議を要する。監査役の任期は、地位強化の観点から、選任後4年以内に終了する事業年度の最終期までと長い。法定任期を定款や株主総会決議で短縮することはできない。自己監査には意味がないので、監査役は会社の取締役・使用人、子会社の取締役・執行役・使用人を兼ねることはできない。それまで取締役であった者が、事業年度途中の株主総会で監査役に選任されることがあり、自己を含む取締役の職務執行を監査することになるが、それは許されている。それまで使用人であった者が、常勤監査役に就任するのは一般的な実務である。

監査等委員である取締役
監査等委員である取締役とは、監査等委員会設置会社における取締役のうち監査等委員である取締役をいう。株主総会で選任されることは通常の取締役と同じであるが、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役の選任は区分してなされる。監査等委員である取締役の解任には株主総会の特別決議を要する。監査等委員である取締役の独立性は、監査役会設置会社における監査役と同様である。

会計監査
会計監査とは、取締役が株主総会に提出しようとする会計に関する議案、書類、電磁的記録、その他資料を調査し、その結果を株主総会に報告することである。

常勤監査役
常勤監査役とは、他に常勤の仕事を持たず、会社の営業時間中はその会社の監査に専念するものである。監査役会は、監査役のうち常勤監査役を選定・解職する。

社外監査役
社外監査役とは、大まかにはその企業の従業員出身でない監査役であるが、より詳述すれば、会社法が定義する次のような要件を全て満たす者である。

 1) 就任前10年間、会社(子会社も含む)の取締役、会計参与、執行役又は使用人でなく、
 2)就任前10年間に、会社(子会社も含む)の監査役であったこと(当該職)があるなら、当該職への州任前10年間に会社の取締役、会計参与、執行役又は使用人でなく、
 3) 会社の自然人である親会社等、親会社等の取締役、監査役、執行役、使用人でなく、
 4) 会社の姉妹法人の業務執行取締役、執行役、使用人でなく、
 5) 会社の取締役、執行役、重要な使用人又は自然人である親会社等の配偶者又は2親等内の親族でない。

社外監査役の除外要件に、親会社や主要取引先の業務執行者、多額の報酬を受領する専門家が含まれていないことには注意が必要である。監査役会設置会社においては、監査役の過半数は社外監査役である必要がある。

独立監査役
独立監査役は、東京証券取引所が、上場規程で定める「独立役員」の要件を満たす監査役である。この要件については独立取締役の箇所を参照のこと。東証が定める上場規程は、独立役員を少なくとも1名以上確保する義務を定める。独立取締役を1名以上確保するのは努力義務である。独立取締役を置かない会社は独立監査役を置く必要がある。

監査役の独任制
監査役の独任制とは、複数の監査役がいる場合でも、個々の監査役が単独で権限を行使できることを指す。監査役会が設置される場合も、監査役は独任機関である。違法性監査は、多数決で結論を出すべき性質のものではないためである。

監査役会
監査役会とは、監査役会設置会社に設置される、3名以上の監査役全員からなる機関である。監査役会は常勤監査役を選定・解職する他、監査方針、調査方法、各監査役間の役割分担を決め、監査報告書を作成する職務を行う。ただし、監査役会で役割分担を決めても、監査役は独任制であるので、各自の監査権限を制限することはできない。取締役会と異なり、書面決議はできない。

会計監査人
会計監査人とは、会社の計算関係書類につき、会社から委任されて監査を行う専門家を指す。資格を有する者は公認会計士又は監査法人に限られる。会計監査人を置くことが義務付けられる会社は、大会社、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社である。上場会社も、金商法によって、投資家へ提供される情報としての財務計算書類について、公認会計士又は監査法人から監査証明を受ける必要がある。会社法の定める会計監査人と金商法定める公認会計士又は監査法人は同一であるのが通常である。

公認会計士又は監査法人の法令違反等事実の通知義務
公認会計士又は監査法人は、監査証明をする際、法令違反事実その他の財務計算書類の適正性に影響を及ぼす恐れがある事実を発見した時は、是正するよう遅滞なく、会社に書面通知する、金商法上の義務を負う。通知後一定期間(一例では2週間)後も是正されず、重大影響防止の必要があれば、会社に事前に書面通知した上で、内閣総理大臣に意見申述する義務がある。この意見申述は、会社に事後にも書面通知する必要がある。

会計参与
会計参与とは、取締役と共同して計算書類を作成する会社の機関である。監査法人、公認会計士又は税理士の資格を有する者が就任できる。会計監査人設置会社以外の会社、主に中小企業に、税理士を起用して計算を適正化することが法律の狙いである。

相談役・顧問
相談役・顧問とは、会社と委任契約を締結して相談・顧問サービスを提供する者である。退職後の警察官僚や行政官僚が就任して、その経験に基づくアドバイスを提供することもある。会社の取締役であった者が、会社内規による定年で退任した後に、既定の福利厚生として、相談役・顧問に就任して報酬を受け取ることもある。その場合には、もはや取締役でも執行役員でもないことから、人数、指名、任期は公表されず、選任や報酬について企業統治は働かない。