代表理事インタビュー

 

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1. 自己紹介

ベネシュ:BDTI代表理事のニコラス・ベネシュです。MBAとアメリカにおける弁護士資格をとった後、J.P.モルガンの投資銀行部門に入社して11年の間、様々な仕事・案件を担当しました。その後、日本でM&Aアドバイザリー業務を専門とする会社を立ち上げ、日本滞在は既に29年になりました。スキャンダル後のライブドアを含め、上場・未上場問わず、いくつかの会社の社外取締役も務めた経験があります。

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大杉: 同じく代表理事の大杉謙一です。2013年から、代表権のない理事から代表理事に就任しました。中央大学法科大学院で、法曹を目指す学生に商法・会社法を教えながら、会社法、コーポレート・ガバナンス、金融商品取引法の分野を中心に研究を行っています。

2.  BDTI設立の趣旨

ベネシュ: バブル崩壊以来、日本の経済成長は低迷が続いています。さらに、人口減、製造業の海外移転などによる経済の空洞化が進むなかで、財政赤字がどんどん膨張しました。経済再生への道は決して容易ではありません。

一方で、日本にはまだ優れた技術や人的資本がたくさんあります。それらを生かして日本経済を再生させ、若い世代の税負担を軽減し、成長性と躍動的な雇用機会がある社会を作ることに貢献したいと考えました。そのためにはコーポレート・ガバナンスの向上が欠かせないと考えたのです。人々は知識と理解を深めるためにもっと効果的な研修を取り入れるべきです。
そのため、同様の問題意識をもった専門家や実務家に声をかけ、このような組織を立ち上げました。

大杉: 私は、2013年まで代表理事を務められた若杉敬明教授の後を引き継ぎました。日本企業は、擦り合わせによるものづくり等の分野で目覚ましい成果を上げていますが、他方で利益率が諸外国よりも低く、また開業率・廃業率の低さを見ると経済の新陳代謝は活発だとはいえません。

BDTIでは日本企業・日本経済の現状に問題意識を持つメンバーが集まって、いま何かができるのではないかと考えていろいろなプロジェクトを立ち上げています。たとえば、自宅で空き時間に双方向的に会社法などを学習できるようにeラーニングの教材を開発しています。

3.  コーポレート・ガバナンスの重要性と経済発展への寄与

ベネシュ: 現代の経済の基盤となっているのは「信頼」です。商品を買うにせよ、銀行がお金を貸すにせよ、「信頼」があらゆる取引の前提になっています。同じように、投資家も、ある株式会社が投下した資本を最大限有効に活用して営業を行い、精一杯の配当を返してくれると「信頼」するからこそ、投資を決断するのです。コーポレート・ガバナンスを向上させることは、この「信頼」を高めることです。もし、日本のコーポレート・ガバナンスと経営体制が改善できなければ、日本経済システム全体の不信に繋がり、国内外の投資家は、日本の株式会社への投資を控えてしまうでしょう。そうなれば、日本国外への資金や製造拠点の長期的な流出を招き、ひいては日本企業の衰退、失業率の上昇などを引き起こすこととなります。

一方コーポレート・ガバナンスの向上、経営の効率化が実現できれば、日本国内に新たな投資と雇用を生み出し、また日本国内に預貯金などとして広く滞留している資産が、株式会社への投資にも分配されることとなり、海外投資家からの資金流入も期待出来ることになります。株価が上昇して、長年他の先進国と比べて半分以下の1ぐらいで推移したPBR(株価純資産倍率)が回復する、という可能性はいくらでもあると思います。

大杉: 私自身は、コーポレート・ガバナンスの改善と経済発展の結び付きは必ずしも直接的なものではないと考えています。ただ、現在の日本企業の多くは、部門ごとの従業員グループの連合体のように運営されていて、利害関係が複雑に絡み合い、全体最適に失敗しているように見えます。コーポレート・ガバナンスは、責任を明確化し、全体最適を図るための手段ですので、ガバナンスの改善は長期的には日本企業ひいては日本経済の活性化に役立つはずです。

4.  コーポレート・ガバナンスの向上のために必要な取り組み

ベネシュ: コーポレート・ガバナンスを向上させるためには、その中心的な役割を担う取締役会機能を充実させることが何よりも必要です。我々の提唱する「戦略機関としての取締役会」とは、単に会社法に沿って上程された議案を承認するだけの機関ではなく、早い段階で情報を入手し、必要に応じて新しい観点から適切な分析を行い、議論を尽くし、透明性を確保しながらより積極的に企業方針作成のプロセスに参加し、機動的に戦略的な決断を行うことの出来る取締役会を意味します。

取締役会をこのような「戦略機関」にするため、社外からの取締役や監査役の活躍が期待されています。しかし、「戦略機関」としての取締役会実現には、社外役員だけでなく、社内の取締役や監査役、それに経営陣も取締役会の重要性と役割を認識し、取締役会全体で一丸となって取り組むことが必要不可欠です。一丸となって取り組むには、参加者間に共通認識が必要であり、株主が取締役会に求める経営陣の監視、経営陣に求める効率的経営を理解し、それらを実現・サポートするプラクティスについて、知識とスキルを共有している必要があるのです。そのためには、早い段階、つまり役員になる前からの人材育成が最も大事であると思っています。


大杉:
 
ひとことでいうと「共通言語」の開発と普及にあると考えます。企業の内部で、開発と製造・営業が別の言葉でしゃべっているのでは企業のかじ取りはままなりませんが、取締役会のレベルにおいても、社内の取締役と社外取締役、監査役が目線・基準を共有しなければなりません。そのためには、オン・ザ・ジョブではない社員教育(研修など)や、経営者人材の意識的な育成が必要だと思います。


5.BDTIの主要活動/事業

ベネシュ: 将来の経済発展を生み出すリーダーを育てていきたいと考えています。そのためには、早い段階からコーポレート・ガバナンスとグローバル経営についての知識や認識を持っていただく必要があります。取締役や監査役になってから、知識・認識を得ようとしても、時間が足りません。また、取締役や監査役になる前でも、これらの知識・認識のある若手は、十分に上司をサポートし、取締役会を機能させ、会社の発展に寄与する大切な財産となります。

研修事業以外の啓蒙事業にも力をいれていきたいと考えています。コーポレート・ガバナンスというのは、会社内で役員である人や、取締役会事務を行う部署だけが分かっていれば良いものではないのです。この概念は日本経済の成り立ちと不可分なのです。ですから、研修に参加して下さる方だけではなく、広く一般大衆に向けて情報を発信し、建設的な議論、活発な意見交換の場を提供したいのです。このようなことを通じて日本社会全体のコーポレート・ガバナンス意識を底上げできれば、日本経済に有益な効果をもたらすと信じております。

大杉: 研修事業に加えて、単発のセミナー等にも力をいれていきたいと考えています。コーポレート・ガバナンスというのは、会社内で役員である人や、取締役会事務を行う部署だけのものではなく、それ以外のメンバーにも理解を広げていくべきものです。欧米のガバナンスの概念・知識とわが国の企業実務の間には大きな壁がありますが、どのように日本の良さを残しながら改めるべきところを改めるか、というのは難問です。そのためには、われわれ自身も外部講師の力を借りて勉強しながら、各企業がガバナンスを改善するためのヒントを提供できるように、様々な機会を設けていきたいと考えています。

ベネシュ&大杉:   今後も皆様からの温かいご理解とご支援を宜しくお願いいたします。