
絶え間ない苦情
何十年もの間、日本の国内外の投資家は、次の二点について不満を訴えてきました。
(1) 多くの株主総会(AGM)のほとんどが6月に集中し、しかもその大半が同じ週、さらには全体の25%が同じ1日に開催されるという事実。これでは、投資家が事前準備を整えたり、多くの株主総会に出席することは非常に困難です。
(2) 驚くべきことに、日本企業の多くは、最も重要な開示書類である有価証券報告書(米国の10-Kに相当する資料)を株主総会後に提出しています。これは完全に本末転倒な状態であり、投資家は総会前に必要不可欠な情報を入手できず、総会後になって初めて受け取るという有様です。
(昨年6月、政府の要請を受けて通常より多くの企業が株主総会前に有報を提出しましたが、その多くは総会の1週間前、あるいはそれ以下のタイミングでした。この時点では多くの機関投資家がすでに議決権行使を済ませているので、これは極めて限定的な進展に過ぎません。加えて、多くの有報を精査するには数日以上かかるのが現実です。)
しかし、この問題は解決が難しくない
昨年6月、ソラコムとアドバンテストの2社は、株主に対して本来あるべき敬意を示し、定款を改正して株主総会を6月末以降、たとえば7月や8月に開催できるようにしました。
これにより、両社の株主は株主総会の1か月以上前に有報を受け取り、しかも株主総会は他社の総会が集中しない時期に開催されるため、「総会日程集中問題」を回避できるようになります。
この「解決策」は極めてシンプルです。法律上、株主総会は議決権を確定する「基準日」から3か月以内に開催する必要があります。そこで、両社はこの議決権基準日を3月31日より後に変更したのです。ソラコムは4月30日、アドバンテストは5月15日に設定しました。
両社総会での非常に高い賛成率
両社の株主総会では、定款変更の議案に対する賛成率が非常に高い水準となりました。ソラコムでは99.71%、アドバンテストでは99.78%という結果でした。
これは、再任されるとても有能なCEOであってもなかなか得られない高い賛成率です。
成功が見込める株主提案の絶好の機会
通常、アクティビスト・ファンドが定款変更を求める株主提案を行っても、象徴的な意味合いしかないで20~30%程度の賛成率を得るのが精一杯であります。(定款変更の場合、可決には投票権の3分の2以上の賛成が必要ですので、「象徴的」)。
しかし今回のケースでは、もし機関投資家やアクティビスト・ファンドが、ソラコムやアドバンテストと同様の定款変更を提案した場合、可決する可能性は極めて高いです。なぜなら、現在の制度への不満は長年にわたり多くの機関投資家が公言してきた市場全体の課題だからです。
さらに、建設的な提案として、取締役や執行役員、主要子会社の取締役に対して前年度に実施した取締役研修やガバナンス関連研修(法務、ガバナンス、ファイナンスなど)の内容を毎年開示するよう求めることも可能です。現在、多くの企業はコーポレートガバナンス・コードが求める研修にほとんど取り組んでおらず、その結果として不祥事が後を絶たず、東証の資本コスト方針にもかかわらず平均PBRは1.4倍程度に停滞しています。実際に行動した事実こそが、抽象的な「方針」表明よりも重要です。行動を促す唯一の方法は、実際に何を前年度に行ったかの開示を求めることです。
こうした二つの提案は、すべての株主の利益にかなうものであり、提案者は極めて建設的な株主として評価されるでしょう。
反対が非常に困難
これら二つの提案が有効的である点は、組み合わせることで企業と株主の双方にとって有益であるだけでなく、反対するのが非常に難しいということです。企業側が最初の提案に反対する理由を見出すのは相当苦しいはずで、さらに第二の提案にも反対するならば、株主の利益や対話を一切顧みない姿勢を自ら示すことになりかねません。
まとまな会社なら、「会社案」に変わる可能性が高いです。