本当の「安定株主[1]」比率はどれくらいなのか?

企業年金連合会 コーポレートガバナンス担当部長
公益社団法人 会社役員育成機構 理事
北後(ほくご) 健一郎[2]

「安定株主」、「政策保有株式」、「持ち合い株式」等々、本件に関する呼び名はいくつかあり、特に海外投資家にとっては理解しづらい。彼らは「Cross Shareholdings(持ち合い株式)」という言葉のみを主に聞くのみであり、そこにある日本特有の商慣習の微妙なニュアンスにまで考えが至らないことがほとんどである。筆者は、この数ある呼び名の中でも、コーポレートガバナンスにとっては「安定株主」が最も重要な概念であると考える。従い、実際の「安定株主」はどれくらいの「規模」で、コーポレートガバナンスの改善にどのようなインパクトがあるのか、アセットオーナーの立場としての考えをまとめてみたい。

筆者は、海外出張時に必ずと言っていいほど「日本のコーポレートガバナンスの現状」という題目での講演を依頼されるが、その際に一番やっかいなことは、海外投資家の頭の中には「日本の持ち合い株は10%かそれ以下になった(と報道されている)のだから、それはもう問題ではないだろう」という、点である。無論、著名な研究機関のアナリストによる分析を立派なメディアが報道しているのでその数字自体が間違っているわけではない。しかし、その数字がどのように計算されたのか、その数字だけが全てなのか、という点を説明するのに一番苦労するのである。言うまでもないが、筆者は講演において、海外投資家に日本株式への投資を思いとどまらせるなどという意図は毛頭ない。日本の株式市場の価値極大化はアセットオーナーである我々の悲願でもある。日本のコーポレートガバナンスの進捗をスピードアップし、本物にするためにも、きちんとした現状理解をした上で投資するように講演では聴衆に伝えているのである。

3年間の働きかけが奏功!5社の企業年金がスチュワードシップ・コード受入れを表明

金融庁が11月15日時点で新たにスチュワードシップ・コード受入れを表明した企業年金に三菱商事企業年金基金が加わったことは喜ばしい事です。(「新たに「受入れ表明」をしていただいた機関投資家を色分けしたもの」をご参照ください。)すでに受入れを表明していた企業年金;セコム、パナソニック、NTT、エーザイと併せ、5社の非金融企業の年金基金が受入れを表明したことになります。セコムは最初から表明していましたが、その他の年金基金は、私が首相、企業年金基金の監督官庁である厚労相に要望し、企業年金基金によるスチュワードシップ・コード受入れの促進を目的として厚労省に規則の変更を求める提案書を提出し、結果として厚労省、企業年金連合会、専門家、オブザーバーとして金融庁の担当者が集まる「チュワードシップ検討会」がつくられてから受入れを表明しました。

COMEMO:「英国の戦略に学べ 政策と一体でESG投資拡大」

「以上のタイトルの記事を10月8日発売の『日経ESG』11月号に寄稿しました。

  • 株式会社の歴史に始まるコーポレートガバナンスがこの20年で環境・社会面を取り入れ、いかに強化されていったか
  • それを容易にした英国金融業界の自主性、および金融大国として君臨し続けるための政策はいかなるものだったか
以上の点に触れつつ、日本独自の戦略構築の必要性について説明しています。
ぜひご一読ください。」

COMEMO:「ESGを大学でもっと取り上げよう」

「千葉商科大学が給付型奨学金の安定的な原資形成等を目的として10億円をESG投資に充てると発表しました。もちろんそれ自体も素晴らしいことですが、学部横断的な特別講義「サステナブルな暮らしを考える」を展開しており、事業活動・財務活動の両面でESGの推進に努めています。以下の記事でも説明していますが、このような動きは社会全体で進めるべきで、大学がその重要な一翼を担うと考えています。」

https://comemo.io/entries/8496

COMEMO:「「ESG=投資撤退」ではない」

「前回取り上げたノルウェー政府年金基金は「投資撤退(ダイベストメント:divestment)」の活動で注目を集めることが確かに多いです。実際、先月の日本経済新聞の記事では石炭火力発電比率の高い日本の電力会社6社から資金を引き上げたことを取り上げています。」

https://comemo.io/entries/8300

ESGとSDGsとの関係

最近、ESG投資の話題を持ち出すと、SDGsで話しましょうと言われることが多くなった。

Environment, Social, Governanceを重視する投資と、 国連が掲げるSustainable Development Goalsとの二つは、どのような関係にあるのだろうか。識者の整理は種々あるようだが、ざっくり見るには、次で良いのではなかろうか。つまり、コーポレートガバナンス・コードができたので、Gは焦点が絞りやすくなったが、ESGのEとSは何を指すのか未だふわふわしている。その点、SDGsは開発のゴールが17個設定されているので明確であり、取り組み対象を設定しやすい。だから、ESGのGを少し横に置いて、ESを詳しくしたのがSDGsである、と。投資家と事業会社が対話するときには共通言語が必要であるが、より詳しく対話する際にSDGsが役立っている模様である。

金融庁から「金融行政とSDGs」が公表された。

金融審議会ディスクロージャーWGに係る意見 (ニコラス・ベネシュ)

ニコラス ベネシュ(個人として)
平成30年5月18日
  1. 総論

企業の持続的・長期的な成長のため、いわゆるESG(環境・社会・ガバナンス)の投資手法が日本でも広まってきていますが、私はこれまで、この中でも特に「G(ガバナンス)」が重要であるという認識のもと、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードの制定・発展に寄与すべく、金融庁や日本取引所グループ等に対して様々な働きかけを行ってきました。今では、日本のコーポレートガバナンスは、(もちろんまだ不十分な点も多いですが)世界的に見ても急激な発展を遂げていると評価できます。

そうした中、企業情報の開示・提供は、企業と投資家を結び付ける重要事項です。しかしながら、今のままでは、この点で日本は主要国から遅れを取る恐れがあると言わざるを得ません。いかに近代的なコーポレートガバナンス原則の枠組みを構築しても、多数の企業の比較分析が可能な形でそれぞれの企業の現状が投資家に伝わらなければ画に描いた餅になってしまいます。コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードを車の「両輪」として機能させるため、企業情報の開示・提供のあり方を検証し、整備することは、今日本において最も必要な喫緊の課題であると考えています。(このことは、コーポレートガバナンス・コードを提唱する時から私が強調していた点です[1]。)

以下、この点に関して私がお伝えしたい点をいくつか述べます。

BDTI/METRICAL共同研究アップデート:「CGプラクティスと価値創造のリンケージ」

BDTIとMETRICALは、「CGプラクティスと価値創造のリンケージ」を共同研究しているが、このほど時価総額約100億円超の約1,800社の上場会社について2018年4月末の分析結果をアップデートした。

本分析では、CGプラクティスをボードプラクティスとアクションに分けて考えた場合、ボードプラクティス(取締役会の運営体系)とアクション(実際の企業行動)が価値の創造の指標とされるROE, ROA, トービンのqと有意性のある相関があるかを分析している。

CGコード導入以来、それ以前に比較して一定程度のボードプラクティスの改善は進んだと言えるが、株式会社の目標が価値の創造であるという前提に立った場合、その改善が価値の創造に繋がっているか定点観測することに意義があると見ている。

今回の分析結果において確認されたことは、次のようにまとめられる。