日産最終報告書

日産の最終報告書についても、気になる点をまとめてみました。
https://www.nissan-global.com/PDF/20171117_report01.pdf

今回の問題を、取締役会が防ぐことができたのか、との視点でみると、客観的な経営数字の作り方、情報の流れがポイントであろうと思い、関係箇所を拾い出してつなげてみました。部署や工場が異なる記載部分をツギハギしていますから、あくまでイメージであり、実態はそこまで酷くないということもあることには注意したいと思います。

神戸製鋼事件を考える(続き5)

神戸製鋼が批判されるポイントの一つに、長期間広範な問題を経営層(の一部)が知らなかった、また知らなかったとすることで現場に責任を押し付けたかのように見える、という点がありました。神戸製鋼の経営層が無責任無関心だったとは思いませんし、知りたくても知らなかったというのは、偽らざる本音だと思います。経営層と現場の関係について記載された次の記事に、納得しました。
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1801/05/news039.html

このような関係が本当であったとして、これまで現場任せになっていた品質管理について、経営層はどう関与すれば良いのでしょうか。さらに取締役会が関与する必要はあるのでしょうか。また必要があるとしてもどう関与したら良いのでしょうか。

神戸製鋼事件を考える(続き4)

不祥事防止・発見に社外取締役は役立つのか、どう貢献できるか、大変難しい問題です。これを神戸製鋼最終報告書はどう考えているのか、記載から分かることを整理しておきたいと思います。

前提事実ですが、神戸製鋼は2016年に監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行しました。2017年当時、全取締役は16名、うち5名が独立社外取締役でした。

神戸製鋼事件を考える(続き3)

神戸製鋼の最終報告書が発表されました。
全80頁のうち、48頁以降は、再発防止策に費やされています。
かなりの分量を割き、再発防止に真剣な様子が窺えます。

その中で、取締役会を変えていくとした部分は、51〜53頁です。

(1)リスク管理、品質管理担当の取締役を設置する。
(2)社外取締役の割合を1/3にする。
(3)全事業部門長が取締役になるのはやめ、数を絞る。
(4)取締役会議長は、社外取締役とする。
(5)諮問機関として指名・報酬委員会を設置する。

などの方策が挙げられています。
(4)は、日本で実践している企業は多くなく、思い切った決断であると言えます。
社外取締役と話し合って決めたものと想像しますが、会社にとっても社外取締役にとっても、重大な転換でしょう。

不祥事防止のための取締役の関わり方

来たる3月20日に行われるセミナー「企業不祥事から学ぶガバナンス強化策」の講師である渡辺樹一先生は、Business Lawyersでご論稿を連載中です。その第2回では、対談形式のコラムを私も担当いたしました。

企業価値向上と毀損防止に向けて企業は何をすべきか
第2回 製造不祥事から学ぶ教訓、問題の本質と対応策の提言(後編)
https://business.bengo4.com/category1/article302

神戸製鋼事件を考える(続き2)

神戸製鋼がこれからどのような訴訟を経験することになるのか、未だ分かりません。なので少し脇道にそれますが、ここでは一般的に、不祥事と訴訟の関係について、ある点を考えてみたいと思います。

訴訟はコーポレートガバナンスの重要なツールです、とシンガポール大学の教授から聞きました。最初驚いたのですが、改めて考えるとそれも当然だと納得しました。責任を問われない環境、自律だけが頼みの環境ではガバナンスにも限界があるという意味だと思います。証券訴訟提起を積極的に進めているGPIFは、この考え方を実践しているようです。
http://www.gpif.go.jp/public/activity/shouken_soshou_ichiran.html

GPIFの証券訴訟リストの中に、フォルクスワーゲン (VW) があります。窒素酸化物の排出量を誤魔化すようなソフトウェアを搭載していたというのが、VWの行った不正です。多くのカーオーナーがVWを相手取って提訴していますが、カーオーナーでもないGPIFがなぜ?と不思議に思う方もいるのではないでしょうか。

神戸製鋼事件を考える(続き)

神戸製鋼は2017年11月10日、経産省にある文書を提出し、公表も行っています。タイトルは「当社グループにおける不適切行為に係る原因究明と再発防止策に関する報告書」。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1197967_15541.html

第三者委員会の調査は現在進行中で、本書は中間報告書のような位置付けです。報道によれば、この中間報告書は不十分であると批判が寄せられているとのことです。ここでは内容を整理し、気になるポイントをピックアップしてみたいと思います。

まず起きた事をもう一度確認しておくと、「改ざん」と「ねつ造」です。改ざんは「過去の経験等を踏まえ影響がないと判断する等して」検査結果を書き換えること、ねつ造は「例えば、製品の2箇所を測定すべきところ、1箇所のみ測定し、もう1箇所については、測定せずに想定される規格範囲内の数値を記載」することです。

神戸製鋼事件を考える

神戸製鋼の事件は、日本企業が誇りにしてきた品質管理、社外役員の役割、内部統制の不備、過去の不祥事から得た教訓の活かし方、来るべき訴訟など検討すべきポイントが満載です。しかし、現場で何が起きていたのか、誰がどこまで知っていたのか等は、第三者委員会による調査結果を待つ必要があります。今のうちに、分かっていることを整理しておきたいと思います。

2017年10月8日、神戸製鋼による最初のリリースでは、データ改ざんはアルミ・銅製品にとどまっていました。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1197805_15541.html

ところが、その後進んだ社内調査は、驚きの展開を見せました。まず、社内調査の過程で妨害行為があったとのことです。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1197904_15541.html

データ改ざんが確認された製品は鉄粉や鋼線にも広がり、販売先は525社に登っています。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1198006_15541.html

ある特定の製品や工場に限った改ざんではないですし、期間も長期間にわたるようです。10月8日の記者会見で副社長が10年以上前から改ざんがあったと認めています。ある新聞報道によれば、40年以上前からだとする従業員もいるようです。このため「組織ぐるみ」を指摘する人も出はじめています。「組織ぐるみ」には明確な定義はなく、トップ経営陣が知っていたかどうかで「組織ぐるみ」を判断する見方があるようです。しかし、不正行為が企業の業務プロセスの中に定着していたなら、経営陣の期待や思込みとは別に、「組織ぐるみ」は成立するような気もします。

10年間改ざんをしなければならないような企業が置かれた状況とは、どのようなものだったのでしょうか。神戸製鋼のROEの推移は、次の通りです。

企業風土の鍛え方(続き)

先日ご紹介した NACD Blue Ribbon Commission Report “Culture as Corporate a Asset”について、続編です。次のようなレコメンデーションがあります。

Recommendation #3
Because of its significant interdependencies with strategy and risk, active monitoring of the organization’s culture is a full-board responsibility, with specific oversight activities housed in committees as appropriate. The nominating and governance committee should ensure that board policy documents and committee charters clearly delineate the allocation of such responsibilities and explain how culture oversight is embedded into the ongoing work of the board.

戦略とリスクは表裏一体、だから戦略を考える取締役会がリスクにも注意すべきであり、したがって企業風土の監視は取締役会の仕事である。シンプルで説得力ある帰結ですが、取締役会には社外取締役もいることを考えると、かなり大胆です。企業風土は、外からは観察しづらく中に入って体験するものであるように思えるからです。実際、このレコメンデーションのすぐ後で紹介されるベストプラクティスでは、取締役が直接、様々な事業所、レベルの従業員と定期的に会話することが挙げられ、取締役会に出席するだけが取締役の仕事ではないという考え方が紹介されています。

日本で社外監査役をしながら、かつて経営者であったときと同じように、「現場主義」を掲げる友人を思い出しました。彼は会社の様々な席に出て自分の顔を売り、従業員から情報が集まるように努力しています。そして、会社もそれを歓迎しており、NACDのベストプラクティスを地で行っていると言えます。

企業風土の鍛え方

企業不祥事が取りざたされる度、再発防止策に上げられるのが「企業風土の改善」です。しかし、具体的にどうするのか、多くの人が頭を悩ませていると思います。私もその一人であったところ、民間企業で法務部長経験の長い友人から、NACD Blue Ribbon Commission Report “Culture as a Corporate Asset”を紹介されました。特に、次のリコメンデーションです。

Recommendation #5
Directors should assess whether the chief legal officer / general counsel and other officers in key risk-management, compliance, and internal-control roles are well positioned within management and in relationship to the board to support an appropriate culture.
https://www.nacdonline.org/Store/ProductDetail.cfm?ItemNumber=48252

一部の会社のことですが、ビジネス事業部よりも法務部門は少し格下、コストセンターだし余り大きな顔はできない、ということもあるようです。しかし、このレポートでは、取締役会が、法務部の予算、スタッフ、情報アクセスについて関心を持つべきだとしています。

企業風土の改善で、「法務部」。当然のようにも思え、意外な気もします。いずれにしろ、法務部の予算、スタッフなど、とても具体的で直接的な答えに、思わず嬉しくなりました。しかし、いくら位かけると良いのでしょうか?