日本の働き方改革

2019年7月12日、ワシントンDCのグルーム法律事務所の会議室を借り、日米協会主催で、日本の働き方改革について説明するセミナーを行った。改革の背景(政治的背景とオフィス事情)、法律改正のポイント、生産性向上の問題点と鍵、若年層の就職活動と職業意識、非正規労働者の保護、日本でビジネスをする企業への示唆について、プレゼンテーションを行った。参加者から上がった質問や意見は次の通りである。

経営デザインシートの活用方法を考える

内閣府に設置された「知財のビジネス価値評価検討タスクフォース」が、2018年5月「経営デザインシート」を公表した。この1枚紙のシートの使用目的を私なりに咀嚼すると、こうだ。企業が現在の力を把握し、外部環境を踏まえて将来のあるべき姿を描き、到達に必要な戦略を構築するプロセスのきっかけとなる。このシートは、「経営をデザインする」と題された報告書の付随資料であり、参考資料とともに注目を集めている、と言われている。

重要な事項の虚偽記載

日産とゴーン氏が行ったとされている、報酬を過少に記載した虚偽記載の「重要性」について、弥永真生教授のエッセイが出た(ビジネス法務3月号)。会計にも詳しい弥永教授らしく、有価証券報告書様式の記載上の注意にも触れた、詳細な議論がなされている。意外に思う人もいるだろうが、結論は「重要性あり」だ。ごくごく簡単に彼の3つの論拠をまとめてみた。

ゴーン氏の報酬過少記載は重要事項か

ゴーン氏と日産は有価証券報告書虚偽記載罪で起訴されている。金融商品取引法は、有価証券虚偽記載行為について、刑事責任の他に民事の賠償責任も規定する。日産は、遠からず、投資家から損害賠償を求める民事訴訟に直面するだろう。民事訴訟で予想される争点の1つに「重要性」がある。金融商品取引法は重要な事項の不実記載を虚偽記載として問題視し、軽微なものは等閑視する。

試算:日産が支払うことになる損害賠償額はいくらか

ゴーン氏の刑事事件が進行している。刑事事件だけではことは終わらない。日産が投資家から民事事件を提起されるのは、時間の問題である。ゴーン氏の報酬過少記載に起因して、日産からはかなりの資産が流出すると見込まれる。資産流出の一番大きな部分を占めるのは、投資家が提起する損害賠償請求訴訟であろう。一体いくらの資産流出となるのか、計算を試みた。投資家からの請求に利用される条文の中心となるのは、金融商品取引法21条の2第2項である。この条文は、立証責任を被告に転換し、公表日の前1ヶ月間の株価平均と、公表日の後1ヶ月間の株価平均を計算し、その差分を損害であると推定する。

CGC 原則2-6 企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮

【原則2-6.企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮】
上場会社は、企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自らの財政状態にも影響を与えることを踏まえ、企業年金が運用(運用機関に対するモニタリングなどのスチュワードシップ活動を含む)の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう、運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組みを行うとともに、そうした取組みの内容を開示すべきである。その際、上場会社は、企業年金の受益者と会社との間に生じ得る利益相反が適切に管理されるようにすべきである。

改訂されたコーポレートガバナンス・コードであるが、企業が対応に頭を悩ませるものの最たるものが、これではないだろうか。この原則に関し、「企業年金のアセットオーナーとしての実務対応」(ビジネス法務18巻8号34頁2018年6月21日発行)として、その背景や対応策を寄稿したので、ここにその概要を紹介する。

ESGとSDGsとの関係

最近、ESG投資の話題を持ち出すと、SDGsで話しましょうと言われることが多くなった。

Environment, Social, Governanceを重視する投資と、 国連が掲げるSustainable Development Goalsとの二つは、どのような関係にあるのだろうか。識者の整理は種々あるようだが、ざっくり見るには、次で良いのではなかろうか。つまり、コーポレートガバナンス・コードができたので、Gは焦点が絞りやすくなったが、ESGのEとSは何を指すのか未だふわふわしている。その点、SDGsは開発のゴールが17個設定されているので明確であり、取り組み対象を設定しやすい。だから、ESGのGを少し横に置いて、ESを詳しくしたのがSDGsである、と。投資家と事業会社が対話するときには共通言語が必要であるが、より詳しく対話する際にSDGsが役立っている模様である。

金融庁から「金融行政とSDGs」が公表された。

日産最終報告書

日産の最終報告書についても、気になる点をまとめてみました。
https://www.nissan-global.com/PDF/20171117_report01.pdf

今回の問題を、取締役会が防ぐことができたのか、との視点でみると、客観的な経営数字の作り方、情報の流れがポイントであろうと思い、関係箇所を拾い出してつなげてみました。部署や工場が異なる記載部分をツギハギしていますから、あくまでイメージであり、実態はそこまで酷くないということもあることには注意したいと思います。

神戸製鋼事件を考える(続き5)

神戸製鋼が批判されるポイントの一つに、長期間広範な問題を経営層(の一部)が知らなかった、また知らなかったとすることで現場に責任を押し付けたかのように見える、という点がありました。神戸製鋼の経営層が無責任無関心だったとは思いませんし、知りたくても知らなかったというのは、偽らざる本音だと思います。経営層と現場の関係について記載された次の記事に、納得しました。
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1801/05/news039.html

このような関係が本当であったとして、これまで現場任せになっていた品質管理について、経営層はどう関与すれば良いのでしょうか。さらに取締役会が関与する必要はあるのでしょうか。また必要があるとしてもどう関与したら良いのでしょうか。

神戸製鋼事件を考える(続き4)

不祥事防止・発見に社外取締役は役立つのか、どう貢献できるか、大変難しい問題です。これを神戸製鋼最終報告書はどう考えているのか、記載から分かることを整理しておきたいと思います。

前提事実ですが、神戸製鋼は2016年に監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行しました。2017年当時、全取締役は16名、うち5名が独立社外取締役でした。