取締役会の評価制度と経営者との連携

今日の企業取り巻く厳しいビジネス環境において、取締役会はどのようにビジョンを描き、自社を成功に導くことができるだろうか。取締役会および経営者に対する評価制度は、現在もまだ十分に活用されているとは言えないが、これこそが企業トップ層の最適化に向けて容易かつ迅速に活用出来る取り組みである。

遡ること20年前、取締役会および経営者の評価制度を採用している企業は殆ど皆無であった。 当時の取締役会と経営者の関係性とは、経営者がビジョンを描き、取締役会はそれを忠実に実行することを意味していた。しかしながら、エンロン事件後、ビジネスの世界において、米国のSarbanes-OxleyやDodd-Frank、また英国のガバナンスコードなどの規制が取締役会の在り方に大きく影響し、評価制度を導入する企業や(既に導入している場合)評価制度を更に改善する取り組みが増加した。

そして、評価制度は株主の注目を集めるようになり、これによって機関投資家は企業に対して取締役会の最適化をより一層求めるようになった。今日、評価制度は、ESGやSBP(Sustainable Business Practice)など長期的にビジネスに影響する課題に対して企業のリーダー達がどのように取り組んでいるかを市場へ示すための指標となっている。

評価制度は、以下の取締役会の任務を常に優先課題として認識する上で有効である。

1.企業リーダーとしての能力判定および維持
2.取締役会の構成および再構成
3.企業戦略に対する同意と支援
4.会社のリスクプロファイルの監視
5.より重要な課題に取り組むための時間配分

では、企業はどのように評価を開始すればよいのだろうか。

まずは、取締役会と経営者の連携から評価を着手し、業務改善のためのアクションアイテムを明確化することをお勧めしたい。

実際、評価制度による経営者と取締役会の生産性および連携度合いを測定していない企業は経営パフォーマンス改善のための機会を見逃しているとも言えるだろう。

仮に評価制度を導入していない企業の取締役会と経営者に対して、「お互いの連携に改善の余地はあるか」と問えば、通常「いいえ」と答える人はほとんどいないであろう。それでは、評価制度の実施を行うことなしに自身らが最適な経営活動を行っているかどうかをどのようにして知ることが出来るだろうか。

これまでも取締役会の有効性とコーポレートガバナンスの重要性は、進歩の一途を辿ってきたことには間違いないが、1990年代後半に発生した一連のガバナンスの失敗は、この二つの重要性を更に加速させた。なぜなら、最高経営責任者の選任・解任や経営資本に関わる重要な権限は、ほぼ取締役会にあるからである。

取締役会メンバーが果たすべき重要な役割は、執行役員などの経営陣に対して、不要なリスクを回避し、競合相手の先を行くための具体的で正しい道筋を示すことである。そのためには、多様性に富んだ取締役会を構成し、経営陣を率いるリーダーとしての役割を果たし、企業のビジョンと使命を率先して伝えていく必要がある。また、経営者およびすべての従業員が評価制度を受けられるよう取締役会が組織全体を通して働きかけていくことである。

適切な評価制度を導入、実施している取締役会および経営者は、お互いの連携と各々の役割に自信を持って取り組んでいる。

成功する連携とは何か

自動車の各機能をうまく連携させるには、タイヤを回転させたり、ステアリングやサスペンションをチェックしたりするなど定期的なメンテナンスが必要である。このような連携体制は企業を成功に導くためのプロセスであり日々の経営活動であると言える。取締役会と経営者関の機能不全は、不信感を生み、組織崩壊を導く結果となる。過去の事例からも、取締役会がうまく連携されておらず、多くの個々の取締役会個々人がその能力を発揮していない企業では、そのようなケースが多く見られる。連携のずれが、これまでの主な企業経営失敗の中心にあることは間違いない。連携のずれとはつまり、取締役会が自社の企業戦略を理解していないこと、ひいては企業戦略が投資家の最大の関心事となっていない、それはつまり、企業戦略が競争優位性を獲得または維持できないことでもある。連携のとれた取締役会と経営者の関係は、競争優位性のバックボーンであり、逆に連携のずれは、企業トップ層が非効率で、今後企業が問題に直面する可能性が高いことを表している。取締役会の構成員は、自動車と同様に年1度のメンテナンス、更に教育を施すなどの再調整が必要である。わずかな修正のみ必要な場合もあれば、完全に機能不全で再構築が必要なものもあるだろう。

今日、取締役会の構成員は、株主に対して益々責任感を持つ必要があることを認識しているだろう。その際、取締役会の構成員に求められるのは、これまでの職歴や肩書ではなく、取締役会全体の性別、年齢、その他の多様性である。取締役会における多様性は大きく勢いを増している。今後取締役会の評価制度は、多様性の視点を支援し、更に以下の分析項目を盛り込む必要がある。

  • ミッションとビジョン
  • 倫理と説明責任
  • 取締役会の構成と企業文化
  • 取締役会議と事務局
  • 戦略と有効性の測定
  • 取締役会の経営陣との関わり方
  • 株主に対する取締役会の役割・利害関係者との関与

今日の取締役会は、個々人が組織の成功に貢献する十分な適正を有していることを見据えた上で、流動的、かつその地位に相応しいメンバーで構成される必要がある。取締役会が退職までの安住の地であった時代はとうに終わっているのである。 「我々は、取締役会と株主の両方が良い意味で相互監視を行うことが上場企業の長期的な成功に不可欠であると確信している。」 (公開書簡:コーポレートガバナンスの常識原則、2016年7月)。

取締役会と経営者の評価は、企業戦略を議論する会議と同時に実施すると最も効果的であり、監査やコンプライアンスなどの戦術的な議題の会議の際にはあまり効果的ではない。決算期が12月の企業の場合、春の終わりか夏の時期が最適である。あまり頻繁、および長い時間をかけて実施しては企業戦略策定のための時間を十分に割くことが出来ないので注意が必要である。

戦略策定と連携は、取締役会と経営陣が共に取り組むべき最も重要課題である。それは、互いに深い対話を促し、ステークホルダーとの信頼を築き、多様な意見を取り入れ、より深い洞察と正しい導きの機会を提供するだろう。

Nasdaq Global Corporate Solutionsでは、取締役会および経営者向け評価ソリューションや会議システムを提供しております。

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お問合せは、jp-sales@nasdaq.comまで。

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