日本の働き方改革

2019年7月12日、ワシントンDCのグルーム法律事務所の会議室を借り、日米協会主催で、日本の働き方改革について説明するセミナーを行った。改革の背景(政治的背景とオフィス事情)、法律改正のポイント、生産性向上の問題点と鍵、若年層の就職活動と職業意識、非正規労働者の保護、日本でビジネスをする企業への示唆について、プレゼンテーションを行った。参加者から上がった質問や意見は次の通りである。

  • 統計によれば、日本では、起業志向の若者が減少し、終身雇用に同意する若者が増加しているとのことだが、アメリカでは起業を考える若者が多く、就職するにしても3年先に同じ企業にいるとは考えてないようだ。日米で傾向が逆転しているのが興味深い。
  • 日本でも新しい試みをするインキュベーターがある。社員が大企業に勤務しながら自らのアイディアをビジネス化する形式であり、大企業も後押ししている。そこでは自分が自分のボスであり、企業の従業員でいる場合のような長時間労働は問題にならない。自分の資本は、体力と脳みそだけである。それらを大切にしつつ最大限活かすには、どのように働くべきかを考えるのは、自分自身である。
  • 日本では違法残業が刑事罰の対象になるというのが面白い。しかし、労働の質は量では測れないし、生産性向上に寄与するのか、疑問を感じた。また、雇用主の方だけが刑事罰の対象になるというのも、疑問を感じた。上司個人が起訴されない実務、違法残業をした従業員自身は罰せられない構造、を変えた方が効果が出そうだ。
  • 残業規制で生産性が向上しているとは思えない。働く気のある者が働きたくても叶わず、むしろ悪化しているような気すらする。
  • ソフトバンクやユニクロのように、新しいビジネスモデルを編み出して、世界中でビジネスをする先進的な企業と、残業規制を強める法律、統計に現れる保守的志向との間のギャップが、外国人である私には理解できない。法律で上から変えるのではなく、下から沸き起こる変化の動きはないのか。
  • 政府が働き方改革を推し進めるのであれば、行政府がまずは手本を示し、生産性向上を実現する必要がある。
  • 変化を嫌う人々の気持ちは私にも理解できる。しかし、何がそうさせるのか、その真因を掘り下げ分析する必要であると感じた。
  • 社会学者や心理学者の研究は進んでいるのか、気になる。
  • 企業の人材への投資が必要だとしても、投資を何に振り向けるべきだろうか。
  • 日本では、企業別組合やユニオンショップ協定があり、問題解決を困難にしている一面がある。企業に1つしか労働組合がないため、技術者も管理部門の文系の人間も、同じ労働組合が代理する。それでは、企業と交渉する際、平均をとったような態度しか取れず、誰のためになるのか、わからない結果となる。
  • 私は日本企業と25年間付き合いがあるので、女性登用について状況が良くなっているのは知っているが、あまりにも動きが小さい。

市川佐知子 弁護士登録(日本・NY) USCPA ワシントンDCに在住中。労働法、コーポレートガバナンスに詳しい。

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