金融庁のコーポレート・ガバナンス連絡会議 (2010年)に、議案毎の議決権行使開示を提唱したメモ(ベネシュ)

(メンバーとして2010年6月にニコラス・ベネシュが金融庁の「コーポレート・ガバナンス連絡会議」(第二回の会議)に提出したメモ)

2017年に改訂されたスチュワードシップ・コードでは、議案毎の議決権行使結果の公表が求められているが、恐らくその発想が初めて日本で提案されたのは、2010年6月に私が以下のメモを金融庁の「コーポレート・ガバナンス連絡会議」に提出した時です。最近そのメモが見つかったので共有させていただきます。当該メモでは他にも色々な事を提案しました(以下ご参照)。いまだに(JPXおよびMETIなどに)私が提案中のものも数多くあります。

  • 20%以上の希薄化の場合、株主の承認を要すること。
  • 独立社外取締役のみから構成される「委員会」を設置すること 。
  • 公開会社の取締役会の少なくとも2分の1を超える人数が社外取締役であることを義務付ける こと。
  • イギリスのように、TOBで30%以上を超えそうな時、同条件で全部買付を義務つけること 。
  • エクスチェンジ・オファーによるTOB の有利発行問題回避の利便性ある方法。また、非課税扱い。
  • 議決権行使の参考資料の配布と株主総会の間に設けられている通知期間を、公開会社の場合には少なくとも4週間に延長すること

議案毎の議決権行使結果公表についての私の提案は以下の通りですこれは、改訂スチュワードシップ・コードにあるような 「ボランタリー」な ルールではなく、 議決権行使行為を金融商品取引法41条*の善管注意義務の対象にして、 明確な法的義務として提案しました。いまでもそうすべきだと思っています。しかし、2019年に同様の提案をする場合にはもっと内容を強化します。例えば、保険会社や銀行の場合は開示基準の持ち分比率を「5%」より低くします。やはり透明性の時代が到来したので、いまからこのような法的措置が必要であると思います。又、web site による開示方法ではなく、XBRL形式で統一化が図れているEDINETによる開示を求めます。9年前と違い、今の時代に「機械可読」でないと、せっかくのデータがあまり分析に利用・活用されません。最後に、個々の機関投資家は何株・何口を期末に保有していたのか、の開示も求めるべきです。

「Ⅴ 議決権行使・株主総会 

  • 議決権行使の参考資料の配布と株主総会の間に設けられている通知期間を、公開会社の場合には少なくとも4週間に延長すること(現行の会社法は、最低2週間の通知期間を義務付けている)
  • 議決権行使行為を金融商品取引法41条*の善管注意義務の対象にする。(顧客による免除がない限り、議決権行使義務を負わせる)
  • 議決権行使の開示について
GPIF、PFA、その他の公的年金運用基金 Index投資については、投資先銘柄毎に、議案毎の行使情報をweb siteで一般開示。 (ダウンロードできるファイルフォアマット)  (以下参照)その他 - 統一されたフォアマットで産業別区分毎に、保有期間別議案種類別の行使データ、その他受益者にとって重要な(合計)データをweb siteで開示   
不特定多数の投資家に販売されるファンド (投資信託、等)   各ファンドは投資先会社毎に、議案毎の行使情報をweb siteで一般開示  
保険会社及び銀行 5%以上の持分の場合 - 会社毎に、議案毎の行使情報を web siteで開示その他 - 統一されたフォアマットで産業別区分毎に、保有期間別議案種類別の行使データ、その他保険契約者にとって重要な(合計)データをweb siteで開示  
  • 公的年金運用基金は外部業者にindex fundの運用を委託する場合に、基金自らが策定する議決権行使方針(ガイドライン)を発表しそれに沿って議決権行使の判断・執行義務を委託せずに自ら負うこととする。(方針策定及び行使執行については専門家からアドバイスを受けられてもいいとし、又、最終行使判断以外の作業(行使システム運用、記録等)を統合し第三者にアウトソースが可能。)議決権行使方針は、政治的な影響がないように、独立社外者でしか構成されていない委員会のアドバイスと監督を受ける。議事録は三年後、公開する。

【コメント:議決権行使の判断は善管注意義務の問題とも思われ、これを義務とするのは疑問であるとの批判もありうるところと存じます。なお現状でも民法上の委任としてファンドマネージャーは善管注意義務を負担していると考えられます。上記の(a)の提案でERISA法と同様の理由で(対象資産の全ての権利を最大に運用する義務)権利議決権行使の義務を明確化すれば、整合性がある制度になると考えます。】」

メモの全文

「Ⅰ 企業統治のあり方

1 社外取締役の監督機能、機関設計 

社外取締役は必ずしも十分機能しておらず、委員会設置会社採用企業はごく一部に限られ、制度の限界が露呈している現在の実態を踏まえ、委員会設置会社であるか否かを区別することなく、社外取締役の監督機能の実効化を図るべきである。また、上場会社がTOB等の局面において独立の委員会を設置したことを公表することがあるが、その法的根拠が明確ではなく、対外的な情報コントロールを主眼としているに過ぎず、取締役会が当該委員会の判断に影響力を及ぼしているのではないか、との批判があり得る所であった。

かかる問題に対する一つの方策として、利益相反等の問題が生じる状況においては、独立社外取締役のみから構成される「委員会」(いわゆる委員会設置会社の委員会よりも広義の概念とする)に取締役会が意思決定を公式に委ねることができ、かかる委任を行った場合には委員会の決定事項に拘束力を与え、その議事録を会社に保管させる等の規定を会社法の中に明示することが考えられる。なお、柔軟な運用を可能とすべく、かかる委員会の設置は任意とすることを前提とする。

【コメント: (a)委員会の決定に拘束力を与えると当該決定に従った結果会社に損害が生じたときに、他の取締役の善管注意義務をどう考えるか(例えば、当委員会に参加しなかった取締役の反対意見が議事録に明記されていれば、原則として本決定に関して責任を問われない)、(b)委員会メンバーの選任や委員会への適切な情報開示に関する責任を明記する条文、という点は上記の提案に関する留意点として挙げられます。また委員会の構成員には独立社外取締役以外の者も選任できるという設計も検討可能と存じます。】

2 監査役の監督機能、インセンティブのねじれ、決算監査 

監査役会による監督機能を十全化させる方法としては、次のような方策が考えられる。

年度末において監査役会は取締役会に経費の内訳についての報告書提出を義務付けること。また当該報告書について取締役会は株主総会において意見を述べることができること(問題提起は具体的なものであることを前提とする)。

いわゆるインセンティブのねじれに伴う監査役会の機能不全を解消するために、現状の会社法で認められているような、監査役会が会計監査人の選任と報酬について同意権を有するに過ぎない規制よりも進んで、選任と報酬に関する独自の決定権を付与すること。

3 社外取締役・社外監査役の独立性 

社外取締役の独立性を強化するには、次のような方策が考えられる。

(a)「独立社外取締役」の定義はグローバル・ベストプラクティスに沿うよう会社法を改正する。

(b) 公開会社について次のような規制を加える。

(i) 既に独立社外取締役が選任されている場合、当該独立社外取締役が、取締役又は取締役候補者が独立社外取締役の資格の該当性を判断することとする。

(ii) 取締役の判断の独立性に影響を及ぼす又は利益相反を引き起こす可能性のある全ての事実を開示する旨義務付け、また事後的にそのような事実が生じた場合も開示をする旨義務付けることとする。

(c)公開会社の取締役会の少なくとも2分の1を超える人数が社外取締役であることを義務付ける。(3-4年渡って導入の経過措置。)

4 その他 

証券監視委員会(SESC)の地位強化が考えられる。

(a) SESCを完全に金融庁から独立させる(真の日本版SECに変える)。

(b) SESCに充てられる予算の拡充を図る

(c) SESCに金商法のエンフォースメント権限を与える(強化する)

(d)日本の資本市場の効率化と公正性を図る目的の施策を検討し、改善政策提言を提出する義務、定期的に国会に報告する義務を負わせる

【コメント:上記提案については、一定の税金負担を伴うが、資本市場の効率性や信頼向上から生じるベネフィットは遥かにそのコストを上わまると考える。

Ⅱ 企業集団法制

1 多重代表訴訟 

親会社株主に子会社の取締役等への代表訴訟(いわゆる多重代表訴訟)提起権を付与する方向で検討を進める。

【コメント:上記提案に対しては、子会社の独立性が侵害されるおそれがあるため、制度導入には慎重にこの点を検討すべきである。明確な事情が発生したと判断された限定的な場合のみの適用を奨める。】

2 子会社少数株主保護・債権者保護 

上場子会社も、過半数の独立社外取締役を義務つける方向で検討を進める。独立性の定義上、親会社又はその関連会社で務めた経験がある者、又は過去5年の間にそれらから報酬を受けたことがる者(又はその親族関係者)は「独立性」を欠くこととする。

3 その他

【コメント:上記に加え、親会社を有する上場子会社について、親子間の潜在的な利益相反のおそれのある事項等について開示を充実させる等の提案も考えられます。】

Ⅲ 企業結合法制

1 公開買付けの対象、公開買付け後の売渡請求権・買取請求権 

イギリスのTOBルールを参考に、全部買付義務の拡充を図ることが考えられる。イギリスのルールの原則に沿って防衛策を禁ずることが考えられる。

【コメント:現在の日本市場では全部買付義務を当初からコミットすることは資金負担が重く、当初は3分の2以内を買収し、その後に次の段階を考える柔軟な経営戦略を進めるといった要望が強い(これが果たしていいのか)、というのが実態であり、これに加え少数株主の利益が現状ルールの下でどこまで侵害されているのかの詳しい検討が必要であるところであり、制度の見直しを行う場合にはこれらの点を踏まえた慎重な対応が必要と思われます。しかし、小生の意見として現状の3分の2以内のルールでは、少数株主の利益があまりにも侵害されている例が多いので、むしろイギリスのTOBルールの30%の方が妥当で日本市場の事情に合っていると考えます。】

2 会社法上の株式買取請求権 

結合による相乗効果を評価価値に含める場合、その判断が実務上は困難であるという問題があり、またリスクを負担しない株主に当該相乗効果を払うのは不適当であるので、かかる相乗効果を評価価値に含めないこととすることも考えられる。

【コメント:相乗効果を含めることでインセンティブを与えることは少数株主保護の最後の砦という側面もあり、解釈の明確化を図るべきという意見もあることを踏まえ、上記提案を導入するについてはこの点の十分な議論が必要と存じます。】

3 現物出資規制、エクスチェンジ・オファー 

エクスチェンジ・オファーによるTOBの場合、「過大評価かどうか」の判断対象を取引全体と解釈し、経営判断ルールの基準に沿って判断すべきである。(現物出資規制を緩和し、有利発行規制の例外を設ける。)

事前のプランに沿ってエクスチェンジ・オファーの実行直後再編取引によって100%保有になった場合、売却株主に非課税扱いを与える。

【コメント:エクスチェンジ・オファーについては有利発行の問題もあり、買い手においては株主総会の承認がない場合にデッドロックになるという事態への対応策を検討すべきと思われます。例えば有利発行規制の例外を設けたり、公開買付撤回のルールを緩和する等の措置が考えられます。】

Ⅳ 資金調達

20%以上の希薄化の場合、株主の承認を要する。

Ⅴ 議決権行使・株主総会 

  • 議決権行使の参考資料の配布と株主総会の間に設けられている通知期間を、公開会社の場合には少なくとも4週間に延長すること(現行の会社法は、最低2週間の通知期間を義務付けている)
  • 議決権行使行為を金融商品取引法41条*の善管注意義務の対象にする。(顧客による免除がない限り、議決権行使義務を負わせる)
  • 議決権行使の開示について
GPIF、PFA、その他の公的年金運用基金 Index投資については、投資先銘柄毎に、議案毎の行使情報をweb siteで一般開示。 (ダウンロードできるファイルフォアマット)  (以下参照)その他 - 統一されたフォアマットで産業別区分毎に、保有期間別議案種類別の行使データ、その他受益者にとって重要な(合計)データをweb siteで開示   
不特定多数の投資家に販売されるファンド(投資信託、等)   各ファンドは投資先会社毎に、議案毎の行使情報をweb siteで一般開示  

保険会社及び銀行
5%以上の持分の場合 - 会社毎に、議案毎の行使情報をweb siteで開示その他 - 統一されたフォアマットで産業別区分毎に、保有期間別議案種類別の行使データ、その他保険契約者にとって重要な(合計)データをweb siteで開示  
  • 公的年金運用基金は外部業者にindex fundの運用を委託する場合に、基金自らが策定する議決権行使方針(ガイドライン)を発表しそれに沿って議決権行使の判断・執行義務を委託せずに自ら負うこととする。(方針策定及び行使執行については専門家からアドバイスを受けられてもいいとし、又、最終行使判断以外の作業(行使システム運用、記録等)を統合し第三者にアウトソースが可能。)議決権行使方針は、政治的な影響がないように、独立社外者でしか構成されていない委員会のアドバイスと監督を受ける。議事録は三年後、公開する。

【コメント:議決権行使の判断は善管注意義務の問題とも思われ、これを義務とするのは疑問であるとの批判もありうるところと存じます。なお現状でも民法上の委任としてファンドマネージャーは善管注意義務を負担していると考えられます。上記の(a)の提案でERISA法と同様の理由で(対象資産の全ての権利を最大に運用する義務)権利議決権行使の義務を明確化すれば、整合性がある制度になると考えます。】

Ⅵ 計算書類・有価証券報告書

重要事実を開示する義務の強化を検討する。」

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