BDTI/METRICAL共同研究アップデート:「CGプラクティスと価値創造のリンケージ」

BDTIとMETRICALは、「CGプラクティスと価値創造のリンケージ」を共同研究しているが、このほど時価総額約100億円超の約1,800社の上場会社について2018年4月末の分析結果をアップデートした。

本分析では、CGプラクティスをボードプラクティスとアクションに分けて考えた場合、ボードプラクティス(取締役会の運営体系)とアクション(実際の企業行動)が価値の創造の指標とされるROE, ROA, トービンのqと有意性のある相関があるかを分析している。

CGコード導入以来、それ以前に比較して一定程度のボードプラクティスの改善は進んだと言えるが、株式会社の目標が価値の創造であるという前提に立った場合、その改善が価値の創造に繋がっているか定点観測することに意義があると見ている。

今回の分析結果において確認されたことは、次のようにまとめられる。

(1)ボードプラクティスと価値創造に有意性のある正の相関が確認されたのは、

  • インセンティブ(報酬)プランと実績ROE
  • 指名委員会とトービンのq
  • 独立取締役比率とトービンのq

ボードプラクティスの改善が価値創造に直接つながると期待できる正の相関があまり多くは確認できなかった。おそらくROE, ROAは単年度の業績を表す指標であることが、ボードプラクティスの改善との相関を見出しにくい理由であると考えられる。一方でトービンの q(株価の評価)は指名委員会と独立取締役比率と正の相関があることが確認された。

(2)アクションと価値創造の分析では、多くの評価項目において有意性のある正の相関が確認された。

  • 政策保有株式が売上高比少ない、自己株式消却が多い、成長戦略が明瞭、買収防衛策がない、会社のROE, ROA, トービンのqと有意性のある正の相関
  • 一方で、現金保有が売上高比多い、大株主の持分が多い(親会社のある会社や創業者持ち株の多い)会社のROE, ROA, トービンのqと有意性のある正の相関

政策保有株の削減、自己株式消却、成長政略などの実際の企業行動は直接的に価値の創造に寄与することがわかる。また、結果的に利益率の高い会社は現金がバランスシートに積み上がるため株式の評価が高い、親子上場の子会社や創業者経営会社の利益率が高いことが改めて確認される。

(3)ボードプラクティスとアクションの相関を分析すると、意外にも少なくない評価項目においてお互いに有意性のある正の相関があることが確認された。

  • 指名委員会は、政策保有株式、自己株式消却、買収防衛策、株主総会/IRと有意性のある正の相関が確認された。
  • 報酬委員会は、自己株式消却、買収防衛策、株主総会/IRと有意性のある正の相関が確認された。
  • ダイバーシティは、配当政策、政策保有株式、自己株式消却、成長戦略、買収防衛策、株主総会/IRと有意性のある正の相関が確認された。
  • インセンティブ・プランは、配当政策、株式発行が少ない、自己株式消却、株主総会/IRと有意性のある正の相関が確認された。
  • 独立取締役比率は、政策保有株式、自己株式消却、成長戦略、買収防衛策、株主総会/IRと有意性のある正の相関が確認された。

これらから、取締役会の運営方針の改善の取り組みが実際の企業行動に一定のポジティブな効果が期待できるのではないか、との仮説を立てることができよう。継続的なボードプラクティスの改善は間接的に価値の創造に繋がっているとすれば、CGコードの果たした役割は少なくない。

最後に、独立取締役比率のグループごとの分析では、3つのカテゴリーに分けられる。

(1)独立取締役比率が50%超のグループの価値創造指標およびMETRICAL の CGスコアは共に高い。

業績に自信のある会社が(一層会社を良くしたいという思いから)CGをボードプラクティス、アクションともに改善を推進したと推測される。

(2)独立取締役比率が10%-15%, 5%以下のグループにも収益力の高い会社が含まれている。当然METRICALのCGスコアは低い。

前述の創業者経営企業や親子上場の子会社といった収益力の高い会社は、あまりCGプラクティスの改善(見映え)に関心がない。

(3)その他多くの会社、株主構成が分散されて収益力がそれほど高くない会社その他多くの会社では、CGプラクティスの改善(見映え)に腐心するものの、決定的な改善(独立取締役比率50%超など)には至っていない。

以上のことから、ボードプラクティスの改善の取り組みはアクションを通じて価値の創造に寄与することが期待できる。単年度の指標であるROE, ROAにすぐに効果が現れるかは別としても(株価の評価はそれより早く期待できる)、中期的には価値創造とのリンケージが期待できるのではないか。ボードプラクティスの改善の目安として、独立取締役比率を詳細分析すると、50%超の会社は 1,793社中わずか103社と改善には程遠い構図がわかる(他のボードプラクティスの詳細項目でも遅れている)。一層の改善に向けての取り組みの推進を促すために、今後もCGコードの果たす役割は大きい。価値創造に直接働きかけることができるアクション項目(政策保有株式、自己株式消却、成長戦略、買収防衛策など)の改善を促すようCGコードの改善が強く望まれる。また、投資家の果たす役割ももちろん大きいことは言うまでもない。

こちらのリンクよりガバナンス分析の詳細をご覧いただけます

今回の分析においてもこれまで通りBDTIのアドバイス他ご協力いただけましたことをこの場をお借りしてお礼を申し上げます。

http://www.metrical.co.jp/

松本 昭彦, CFA

Executive Director, Metrical Inc.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です