GPIF「「第3回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」 の公表について」

GPIFが標記のアンケート結果を公表した。内容は以下のリンクから閲覧可能。

http://www.gpif.go.jp/operation/pdf/stewardship_questionnaire_03.pdf

前回まではNikkei JPX 400選定企業を対象としていたが、今回から東証1部上場2,052社に対してアンケートを実施している。その内容について所見を述べたい。

1.IRミーティングにおける中長期視点の議論増加

アンケート結果の概要では以下のように記述されている。

「IR ミーティングにおける機関投資家の議論の時間軸は、「経営戦略」に関しては、半数以上の企業が「中長期視点になってきている」と回答。前回アンケートとの比較では、資本効率などでショートターミズム化しているという回答が大きく減少。」

もちろん機関投資家によるスチュワードシップ活動推進の結果、機関投資家の認識が中長期化したというのも背景にはあると考えられる。一方で過去最高益企業が続出するなど、短期的な業績変動に対しては楽観的になったという側面も大きいのではないかと思量する。足元の業績動向に不安が大きければ、中期経営計画の議論どころではないためである。

「機関投資家との対話において、長期ビジョンを示す企業が約7割に達しているが、中期経営計画期間=長期ビジョンの期間としている企業が多く、その想定期間は3~5年程度との回答が大多数。」

一方で「長期ビジョン」の想定期間は3~5年にとどまっており、少なくとも15年超の期間を想定せざるを得ない人口動態や技術革新、環境劣化等いわゆるメガトレンドに対するビジネスモデルの変革という観点は乏しい。この一文において企業を主語として想定期間が3~5年と示されているが、その情報の受け手である機関投資家が15年超の長期ビジョンを解釈する能力がどの程度備わっているかという点も議論の余地があろう。

2.大企業は「企業価値向上」、小型株は「社会貢献」

ESGやCSRの目的に関する調査結果について以下のような解説がなされている。

「ESG や CSR の目的としては「企業価値向上+リスク低減効果」を挙げる企業が半数強であるが、企業規模によって回答は大きく異なる。大企業が比較的「企業価値向上」を重視(ESG 寄り)する一方、小型株に分類される企業は「社会貢献」(CSR 寄り)を挙げる企業が多い傾向。 」

この一文だけを読むと小型株に分類される企業は「企業価値向上」にそれほど熱心ではないように受け取られかねない。しかし企業理念や提供している製品・サービスにESG/CSR要素を含んでいる会社が小型株でも多く、そのような場合ESG/CSRとして敢えて取り上げることはしない。大企業よりもはるかに限られた人的・金銭的資源を元に、ロボティクスや創薬、環境不動産等社会課題解決に資するビジネスを展開しているのであれば、「企業価値向上+リスク低減効果」を考慮せざるを得ず、あえてESG/CSRのラベルを貼って活動する余裕はないというのが本音であろう。

3.ポジティブスクリーニングであることを評価

GPIF選定の3指数に対する企業側の評価として、以下のような記述が存在する。

「ESG 指数の選定について、6割強の企業が評価。小型株に属する企業については、評価ユニバース(親指数)に含まれていない企業が多く、そのため「わからない」という回答も多い。評価する理由として、公表情報に基づく評価であること、組み入れ銘柄を公開していること、ポジティブスクリーニングであること等を挙げる企業が多い。」

冒頭でアンケート対象企業が大幅増加したことに触れたが、その弊害がこの記述に現れている。ESG指数の評価対象は東証1部上場の時価総額上位500社程度であり、アンケート対象の大多数の企業にとっては無関係である。そのためここでいう企業側の評価とは大企業からの反応ということになる。

また仮に小型株が調査対象に含まれても、前項でも取り上げた通り、評価されにくい状況に置かれていると言わざるを得ない。すなわち小型株はESG/CSRのラベルを貼って活動する余裕はないものの、公表情報に基づく評価である以上、開示情報がESG/CSRのラベルを貼っていなければ、評価されにくいということである。

上記の記述では「ポジティブスクリーニングであること」が評価されている、となっている。ポジティブスクリーニングとは「財務とESGの2つのスクリーニングを使用して選別されたセクターや企業等に投資する」という手法である。しかし世界的な潮流から見るとポジティブスクリーニングがもはや主流のアプローチではないことに注意する必要がある。ESG投資の世界的な推進団体であるGlobal Sustainable Investment Alliance、及び日本の推進団体である日本サステナブル投資フォーラムの最新の統計によれば、ポジティブスクリーニングはESG投資全体の約5%にとどまる。

一方近年浸透が進んでいるのはESGインテグレ―ションであり、「通常の運用プロセスにESG要因を体系的に組み込んだ投資」と定義される。この手法であれば先述のESG/CSRのラベルを貼った活動はないものの、実際には社会課題解決に資するビジネスを展開している小型株は評価されることになる。ESG投資が単に情報開示の巧拙を競わせるためのものではなく、社会課題解決と投資リターンの両立を図るのが目的であることを考慮すれば、ESGインテグレーションがより重視されるべきだろう。

 

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