神戸製鋼事件を考える(続き)

神戸製鋼は2017年11月10日、経産省にある文書を提出し、公表も行っています。タイトルは「当社グループにおける不適切行為に係る原因究明と再発防止策に関する報告書」。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1197967_15541.html

第三者委員会の調査は現在進行中で、本書は中間報告書のような位置付けです。報道によれば、この中間報告書は不十分であると批判が寄せられているとのことです。ここでは内容を整理し、気になるポイントをピックアップしてみたいと思います。

まず起きた事をもう一度確認しておくと、「改ざん」と「ねつ造」です。改ざんは「過去の経験等を踏まえ影響がないと判断する等して」検査結果を書き換えること、ねつ造は「例えば、製品の2箇所を測定すべきところ、1箇所のみ測定し、もう1箇所については、測定せずに想定される規格範囲内の数値を記載」することです。

この文字だけを見るととても怖くなります。しかし、どれだけ危険な行為であるのかは、実感がわきません。鉄道会社や自動車メーカーのいくつかは、自社基準は満たしている(ものもある)と発表しています。

上記の事が起きた原因として、中間報告書は次の5つを列挙します。
(1)収益評価に偏った経営と閉鎖的な組織風土
(2)バランスを欠いた工場運営
(3)不適切行為を招く不十分な品質管理手続
(4)契約に定められた使用の遵守に対する意識の低下
(5)不十分な組織体制

上記(3)のタイトルが少し分かりづらいのですが、該当箇所の内容は次のように要約できます。
顧客の規格が厳しくなっていった、それよりさらに厳しい社内規格があった、社内規格は守ることが非現実的な無意味なものとなっていた、そのような状態が放置されていた。

社内規格は守れなくても良いと考えるうちに、顧客規格も守らなくても良いと考えるようになってしまったということなのでしょうか。しかし、顧客の自社基準は満たしているのだとすると、顧客は自社基準とは別に、神戸製鋼に求める規格を設定していたようです。安全のための糊代として、そういうものがあるのも当然だと思います。そうだとすると、顧客は安全のために設けた糊代のために、かえって自社製品の安全に大きな不安を抱えることになり、神戸製鋼は糊代にさらに糊代を設けて苦しくなって不正に走ってしまったことになります。

品質管理のためのプロセスを守らないのは、重大な問題です。しかし、それがもたらす危険性がよく見えず、私は本件の深刻さを測りかねています。それが、この中間報告書では不十分であるという批判に繋がっているようにも思えます。他の批判点として、「工場」や「アルミ・銅事業部門」を悪者扱いするのは間違いだ、というものがあります。

「工場」と「経営」を2極化させたような書きぶりは中間報告書のそこここに現れます。原因の所在を突き止めようとすれば、会社を分解して、どこで何があったのかをはっきりさせる必要があります。そのような視点からすれば、工場が実行し、経営が見過ごしたこと自体は否定しがたく、報告書の書きぶりは自然なものに思えます。

アルミ・銅事業部門に改ざん・ねつ造が偏っているというのは、とても興味深いポイントです。Annual Report2017によれば、各セグメントの経常利益は次の通りです。
Construction Machinery -31.4b JPY Iron & Steel -29.6b
Electric Power 27.1b Aluminum & Copper 24.9b Welding 14.2b
Machinery 12.2b Engineering 5.8b Other Businesses 15.8b

アルミ・銅事業部門はセグメント2位の経常利益を出しており、伝統的な鉄鋼事業部を助けている格好です。この2事業部の成績を遡ってみます。アニュアルレポートから営業利益やSegment Incomeを抜き出すと次のようになります。
(2008から2017への順)
鉄 91.9b 77.7 23.7 -14.7 -50.2 33.6 28.8 -15 -29.6
アルミ -26.9b 7.6 14.8 6.1 3.9 15.2 15.2 15.1 12

中間報告書では「工場において収益が上がっている限りは、品質管理について」「把握しようという姿勢が不十分」だったとされています。しかし収益が偏重されていたのであれば、営業損失に陥ることも多かった鉄鋼事業部は、どのような扱いになっていたのでしょうか。収益性と不正に何か関係があるなら、今後出されるという報告書で、それがどのように分析されるのか、とても気になります。

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