パナマ文書と文書化義務

パナマ文書により、国際税務に関する関心が再度高まっています。

OECDでは、BEPS*対策として、行動計画を取りまとめています。そのうちの行動13は「多国籍企業情報の文書化」です。

*BEPS: Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転:多国籍企業が国際的な税制の隙間を利用して租税回避する問題

これを受けて、日本の平成28年度税制改正は、租税特別措置法の一部を改正し、移転価格税制に係る文書化を一定の多国籍企業グループに義務付けました。

https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28iten-kakaku.pdf

該当する企業は、マスターファイル、ローカルファイル、国別報告書などの文書が、適切に作成・提出・保管される体制を構築する必要があります。会社法もまた、企業集団の業務の適正が確保される体制を求めており、海外子会社も含めて整合的に移転価格を取り扱うことがさらに重要になるでしょう。また、税務当局による移転価格調査も容易・広範になり、課税額に関する争訟が将来増えることも考えられるところです。

以下では、田辺総合法律事務所が過去に取り扱った、移転価格税制に関する事例をご紹介します。

海外移転価格を巡る国税不服審判

(東京国税不服審判所平成22年1月27日裁決)

[事件の概要]

依頼会社の東京本社が、香港やフィリピンの子会社にパソコン電子部品の材料を輸出し、子会社から完成品を輸入する取引において、本社の利益を海外子会社に移していたとして、2005年6月に東京国税局から213億円の更正処分を受けた。これに対し異議申立をすると、2007年6月異議決定により30億円の処分取消があったため、残余について不服審判所に処分取消を求めた事件である。

[裁決の要旨]

  • 独立企業間価格の算定方法は、独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法のいわゆる基本3法が優先適用され、これらが用いることができない場合にその他の方法が適用される。審判所は、残余利益分割法を採用した。
  • 分割指標に含まれる研究開発費であるが、海外子会社が負担して、東京本社が研究開発した場合、貢献の帰属はいずれにあるか。研究開発の意思決定、研究開発プログラムの進捗管理、リスク管理において海外子会社が果たした機能等に着目し、研究開発を通じて生じる無形資産の形成に貢献していると判断し、海外子会社に帰属とした。

[ポイント]

  • 顧客企業は課税庁に移転価格事前確認を申請し、慎重に取引価格を決定しようと、審査に協力していたが、課税庁が不可解な経緯で税務調査に発展させていた事情があった。
  • 当事務所は、この事情につき課税庁の説明を求釈明するなどして、積極的な反論活動を行った。
  • これにより141億円の処分が取り消された。

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