About Money: 電力業界の未来 by キャリー・クロジンスキー (黒田一賢 抄訳)

業界分析第2弾は同じく急激な変化を求められている電力業界である。

(黒田一賢が自動車業界のコメントを日本語訳し、LinkedInその他に掲載してくれたことに感謝する。)

電力業界と自動車業界は深く結びついている。電気自動車が環境にやさしいと呼ばれるには燃料たる電力もそうでなければならないためだ。

テスラが電気自動車を設計・製造し、意識の高い消費者は好んで購入する。しかし石炭発電の電力により走っているのであれば、電気自動車は通常のガソリン車より環境に悪影響を及ぼすだろう。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究によると、車の製造から廃棄までのライフサイクル分析で電気自動車はエネルギー消費でガソリン車の約60%で済むと結論付けている。すなわち再生可能エネルギー利用でさらに節約が可能になる。

運輸業界へのエネルギー消費削減要求と同様、電力業界による再生可能エネルギー利用拡大への圧力も高まっている。

この分野での米国の先進企業はNRGである。彼らのホームページにはラスベガスでのケーススタディとともに、 最大のエネルギー源である太陽エネルギーへの同社の取り組みが掲載されている。

NRGのCEOであるデヴィッド・クレイン氏はステークホルダー・レターで以下のように述べている。

「もうすぐ成人する次世代は私達の世代とは異なる。次世代はクリーンエネルギーを含むすべてにおいて持続可能性にコミットしている。それは私達のように学習したからではなく、彼らのDNAに根付いているからである。

私達が年老いた時、子供達は裏切りと落胆の視線を私達に向け、持続可能性について様々なことを知り得たにもかかわらず行動を起こさなかった理由を問い詰めるだろう。技術を持たなかった、持っていても異常な程高価だった、政府が行動を促さなかった等様々な言い訳をこれまで私達は並べてきた。

しかし安全で、信頼性が高く、実用性があり、持続可能な技術は既に存在している。それらは快適な現代生活を止めさせるものではなく、我々が為すべきことを示しているのである。また多くの高付加価値サービスを通じて株主価値を何倍にもすることが可能だ。このソリューションは消費者としての個人に焦点を当てており、後手に回り、対応が遅れがちな政府とは無関係である。

行動を起こすのは今である。既に言い訳のための時間は使い果たした。」

NRGが持続可能性について先進的な企業なのは明白だ。例えばCDPの”Mind the Science”レポートは同社の2050年までに温室効果ガス90%削減という目標を高く評価した。改善の余地はあるが、既に同社は環境影響について発電所毎の情報開示に努めている。ここまで出来ている同業他社はそうは無い。NRGの過去5年の株価パフォーマンスは必ずしも芳しくないが、既に事業の基盤固めを終え、今後の競争力の源泉となる世界戦略を持っている。

これは欧州の電力会社とは対照的である。特にドイツのRWEやE.ONは財務面で苦戦しており、持続可能性の面での事業構造改革はNRGの後塵を拝している。

ドイツのEnergiewende(電源構成改革)は再生可能エネルギーによる発電・使用に焦点を当てた抜本的構造改革である。ドイツは石炭使用を数年の内に止め、大規模電力会社の寡占から地域密着・小規模発電への切り替えを実行している。スウェーデン、デンマークそしてドイツでの経験を振り返れば、蓄電やスマートグリッドの提供会社は魅力的な投資対象となるだろう。中国も急激に再生可能エネルギー利用を加速させ、逆に石炭利用を削減する方向に動いている。そのために株式だけでなくグリーンボンドによる資金調達の可能性も探っている。これらは全て石炭業界にとっては逆風で、米国では同業界の時価総額が過去数年で90%減少した。

RWEが現在抱えている難題を2008年に発行した私達の最初の本で指摘したが、同社の戦略転換には至らなかった。同社の株価は過去5年で64%超下落した。

業界間・エネルギー使用における相互作用は歴然と存在しており、それを見抜けない投資家の運用成績は市場よりアンダーパフォームする。その相互作用は持続可能性への関心が進むごとに強まり、市場に新たな需要を生み出すことになる。

この点で電力業界は非常に興味深く、業界のリーダーと出遅れ組がはっきりとしている。エール大学で10年続いているTruEVAという研究は、気候変動が市場価格に適切に反映された時、電力会社その他の企業で石炭利用による環境影響で損失が発生することを示している。米国EPA(環境省)の最近のClean Power Planでもこの損失を取り上げ、同計画が業界再編に必要であるとしている。

伝統的な発電施設・固定観念に固執する企業への投資は危険と言わざるを得ない。

これは世界各地で蔓延っており、例えば日本は福島原発事故を経ても原子力産業拡大の道を探っている。世界のエネルギー消費の中での再生可能エネルギー利用拡大は急速かつ簡単には進まないが、投資家がリターン追求のために注目すべき業界であることは確かである。

未だ気候変動を抑えるのに必要な電源構成改革は進行中である。

今後5年でフォワード・ルッキングな電力会社、関連ソリューション提供会社が、伝統的なビジネスモデル・戦略に固執する企業にアンダーパフォームするとは考えにくい。

原文: http://socialinvesting.about.com/od/Sustainable-Investing-Strategy/fl/The-Future-of-Electric-Utilities.htm

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