ガバナンス・コード実施: 自社で書く「コーポレートガバナンス・ガイドライン」のすすめ

BDTIと EY Japanが共催したコーポレートガバナンス・コード実施に関するセミナーで、私は以下のコメントしました。(尚、「XYZ社のコーポレートガバナンス・ガイドライン」の概念にご興味がある方は、info@bdti.or.jp までお問い合わせください。セミナーのレポートはこちらです。) 

  「一年以上前に金融庁主導下のコーポレートガバナンスコードを塩崎先生に提案しました。、そしてその後、柴山先生がリードなさる経済再生本部の金融調査会にその発想、シチュワードシップコードと「車の両輪」の関係などをプレゼンしました。その時、こんなに早く進むとは思いませんでした。

言い出しっぺとして、私は早い段階で色々なアイデアを議員および金融庁に勝手に提案できる(する)立場になって、中にはコード項目になったものが少なくありませんが、まあ、外からがたがた言うのは簡単であって、実際に大仕事と難しい調整を行ったのは塩崎先生をはじめ、柴山先生、自民党、そして勿論金融庁の担当チームでした。彼らの献身的なリーダ―シップをみて、感心しました。心から感謝しております。

コードの実施について、私が特に重要視する点を申し上げます。先ずは、コードは画期的な「良い変化」を日本経済にもたらすと思います。なぜなら、コードの導入によって、日本は初めて本格的に「ベスト・プラクティス」という概念を導入することになります。もはや、コーポレートガバナンスは弁護士がコンプライアンスの観点から「どうやって会社法の要件を満たせるか」を指導する、形だけのものじゃなくなります。到来した新しい時代では、ガバナンスは経営者、取締役、投資家がともに会社の成功のために絶えず改善するものになります。これは「ベスト・プラクティス」です。

実は、私個人が提案したコード項目の多くは、自分の社外取締役としての経験から、「より実効的に行動するため、どのようなルールがあればよかった」という極めて現実的な観点から生まれました。まさに、コードに書かれている「独立取締役の更なる活用」、監査役の活用、のためにの観点でした。他の国の「ベスト・プラクティス」を参考にしましたが、日本の法体系と企業風土、特有の課題に合わせました。

従って、企業担当者の皆様に対して私のアドバイスは、“Boys Be Ambitious”ということです。 つまり、「最低限、何が必要か?」という考え方を捨てて、先ず最初に「コードに沿って設計しながら、自社にとって更にいいガバナンス体制を目指して、自社の内規を作ってください」ということです。

そうしないと、TSEに提出するコーポレートガバナンス報告書の作成プロセスは、改善なしの本末転倒のプロセスに成ってしまう恐れがあります。先ず誠意をもって深く考えて良い内容を決めなくてはなりません。そうしないと「この辺で妥協するか?君、後は何か曖昧なexplain 文書を書いてね、、」と言ったような内容になってしまいます。

しかし、”principles-based approach” (「原則主義」)に沿って投資家が期待しているのは、それ以上の優れたプロセスです。考えてみれば、経営においては、「最低限ここまででいいや」というふざけた態度をとりますか?当然とりません。ガバナンスも同じです。

これは簡単なことではないとよく分かりますが、ガバナンスのPDCA的な好循環には不可欠です。似たような精神は、コードの何箇所に反映されています。

また、コードの中に、日本には新しい概念が入っています。例えば、独立社外者のみの「エグゼクティブ・セッション」会合、筆頭独立社外取締役、ボードの自己評価、指名に当たっての方針、役員研修の方針、株主との対話に関する方針、などでがあります。

これらの新しい概念があるから、多分皆様にとって実務上どうなるか、実効的に実施するのにどうすればいいのか、その詳しいイメージがわかない面が多いと思います。

そこで、私はお手元の「XYZコーポレートガバナンス・ガイドライン」を用意いたしました。ご覧の通り、この仮想的なXYZ社は、とても真面目に取り組んでコード項目が対応している課題について深く考えました。後でお互いに理解の相違が起きないように、また、株主と社会にこれを公表することによって自己規律が機能するように、このガイドラインを作った、という例です。

これは一つの例に過ぎません。これ以外に100以上の「遵守するガイドライン」の形があるはずです。

コーポレートガバナンス報告書と合わせて、このような「自分で考えて、自分の表現で書いた」ガイドラインをお勧めいたします。機関投資家が一番確認したいのは、中身、実質、難しい戦略の舵取りを可能にする体制です。魂が入っている仏の株式だと確認出来れば、それを長期的に保有したいです。できるだけこのような生きているガイドラインを見せれば、投資家にとって納得しやすいです。

こうすれば、コードが求める開示の殆どすべてが出来ます。特に、原則3-1にある「本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポートガバナンスに関する基本的な考え方」、又その下の補充原則の「利用者にとって付加価値の高い記載」に沿って、コミットメントあり開示ができます。」 

ニコラス ベネシュ

(ガイドラインの抜粋)

XYZコーポレートガバナンス・ガイドライン(例)

第1章 総則
第1条(目的)

1. このガイドライン(以下「本ガイドライン」という。)は、株式会社XYZ(以下「当社」という。)におけるコーポレートガバナンスに関する基本的な考え方を示すものである。当社は、第2条で定める当社の使命・理念を実現するため、取締役会やこれを支える諮問委員会等の会議体に対してそれぞれに必要とされる役割を担わせるとともに、各役員や従業員に対して行動指針を示し、それぞれが監視・監督の機能を有機的に果たすことができるような企業統治システムを構築することを目指している。本ガイドラインは、かかる観点から当社が構築した企業統治システムを、株主その他のステークホルダーの皆様に当社のコミットメントとしてお伝えするとともに、当社の自己規範として機能させることを目的とするものである。

2. 本ガイドラインは、当社の現在の企業統治システムを定めるものであるが、今後、これを随時見直し、より良いものにしていく努力を惜しまない。本ガイドラインに定める内容に変更があった場合には、速やかに改訂後の本ガイドラインを公表するものとする。また、本ガイドラインは、理念や考え方を中心に定めるものであるため、個別具体的な対応において本ガイドラインに反する事態が生じることを完全に否定するものではない。但し、そのような事態が生じた場合には、本ガイドラインに従うことができなかった又は従わない方が当社の使命の実現に資すると考えた個別の理由を随時速やかに開示する。

第2条(使命・理念)

当社の使命は、持続性のある事業活動の継続と企業としての中長期的な発展であり、これを実現すべく、以下を理念として掲げる。  、、、、[など、12ページ程、細かい内規が続く]

ニコラス ベネシュ

BDTIについて BDTIでは、取締役や監査役など役員として、また業務執行役、部長など役員を支える立場の方としての基本的な能力を身に着けるための役員研修「国際ガバナンス塾」を定期的に開催しています。(オーダーメイド役員研修も、承っております。)また、「会社法」「金商法」「コーポレートガバナンス」の基礎をオンラインで学べる低価格のeラーニングコースを提供しています。詳細はこちらから。講座の概要は以下の通りです。

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