「運用会社からみたスチュワードシップ・コード ―成長戦略に資するために― 」 (アセットオーナーが運用委託契約締結の条件としてスチュワードシップ・コードの採用要請の効果について)

(日本の事情を考えると、下記の記事抜粋では、特に注目すべき点は「アセットオーナーが運用委託契約締結の条件としてスチュワードシップ・コードの採用を要請したことが採用機関数の拡大につながった模様であり、現在では200以上の運用会社(アセットマネージャー)がスチュワードシップ・コードを採用しており、わずか1年で倍増となった」というポイントであると思われます。)(著者の許可で、証券アナリストジャーナルにでた記事を引用します。)

p. 30   「  2. 海外エンゲージメントの歴史

2.1. 英国発の「株主責任型」スチュワードシップ・コードの歴史
日本版スチュワードシップ・コードの基盤となった英国のスチュワードシップ・コードは、歴史的には会社不祥事を発端とする「株主責任論」が源泉となっている。

80年代英国で社会問題となったBCCI事件やマクスウェル事件などの会社不祥事を発端とし、92年にはキャドバリー報告書が策定されたが、この報告書の策定には代表的な機関投資家(注1)も参加しており、英国ではコーポレートガバナンスの議論が始まる初期の段階から、機関投資家の責任は注視されてきた。その後01年に英国財務省より、マイヤース報告書による機関投資家の責任論が論じられたが、議論は停滞した。本格的に議論が進展したのは、リーマンショック後である。金融機関のコーポレートガバナンスを見直すために公表されたウォーカー報告書(2009年)を基盤として、スチュワードシップ・コードが策定された。

このように英国のスチュワードシップ・コード、エンゲージメント活動は「株主の責任」を源泉としてスタートしたものである。上田[2013]によれば、機関体力のある大手運用会社が当初より採用し、遅れて小規模の機関投資家が採用しており、その障害となったのは事務負担であった可能性が示唆されている。また、アセットオーナーが運用委託契約締結の条件としてスチュワードシップ・コードの採用を要請したことが採用機関数の拡大につながった模様であり、現在では200以上の運用会社(アセットマネージャー)がスチュワードシップ・コードを採用しており、わずか1年で倍増となった(図表1。

図表1 英国スチュワードシップ・コードの採用機関数 (注2) 
10年10月
13年3月
14年3月

アセット・マネージャー
48
101
205

アセット・オーナー
12
60
74

サービス・プロバイダー
8
14
14

その他公開指示書簡を提出した機関
6
10
10

合計
74
185
303

出所:上田(2013)およびFRCウェブサイトより筆者作成

 

その運用実態はいかなるものであろうか。IMA(Investment Management Association)はスチュワードシップ・コードの運用実態の調査を行っており、運用機関(アセットマネージャー)、アセットオーナー、サービスプロバイダーに調査票を送っている。同調査によれば、英国エンゲージメントにおいては経営者報酬が最も議論されている議題となっている他、経営代表者のリーダーシップや経営陣の多様性も上位に来ており、コーポレートガバナンスを主論としながらも、企業戦略そのものに言及するエンゲージメントも多い(図表2) 」

図表2 英国エンゲージメントの論点

英国エンゲージメントの議題に関するランキング

 
2012
2011

経営者報酬
1
1

企業戦略及び企業目標
2
2

経営リーダーシップ
3
8

経営陣の多様性
4
3

企業活動及びリストラクチャリング
5
10

環境/社会的事項
6
4

M&A
7
6

経営後継に関する計画
8
9

リスク選好度
9
5

新株引受権
10
7

回答数
80
64

出所:IMA[2013]より筆者作成
 
 

(注1) 機関株主委員会(Institutional Shareholders’ Committee)委員長が参加している。

(注2) 10年10月、13年3月は上田[2013]調査、14年3月は筆者調査。

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曽 田 大 地CMA
光 定 洋 介CMA
(証券アナリストジャーナル、2014年8月、Vol. 52、No.8から引用)

証券アナリストジャーナルの本論文の全文

https://www.saa.or.jp/apps/journal/JournalSearchTop.do

光 定 洋 介

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