「ソニー精神」を奪ったのはガバナンス改革なのか?

初めて投稿させて頂きます。ガバナンスを中心に責任投資の調査に従事している者です。

先日SNS上でこちらの記事が複数シェアされ、反響を呼んでいました。

ソースは週刊現代ですが、「米国型ガバナンスを取り入れて短期経営に陥った」「株主利益を重視することで長期的な技術開発ができなくなった」という短絡的な意見は世間一般によく聞かれるかと思います。

現代ビジネス「元副会長、ウォークマンの産みの親ほか かつての幹部が実名告白 あぁ、「僕らのソニー」が死んでいく」

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38460

 

こちらにご参集の皆さまはこうした意見に対し、どのように反応されますでしょうか?

以下、長文になりましたが、2つのことをお伺いしたいです。

 1.委員会設置会社という制度の問題ではなく、取締役・社外取締役の能力不足(教育不足)ではないか?

 2.セカンダリー市場はどこまでのリスクを許容するのか。技術者が「余裕を見つけて好きなことをやる」のは、株主が国内外に分散した現代日本の上場企業において許してよいものなのか?

 

本文中にもある通り、ソニーの競争力の核である「技術」を理解していない社長が二人も続いてしまったのは同社の不幸だったのかもしれません。しかし、同社以外にも日本のエレクトロニクス産業が総崩れになってしまったことを鑑みると、かつての繊維や鉄鋼と同様、産業構造として時代の変化についていけなかったとも考えられます。

また、構造的要因はありながらも経営トップにも責めに帰すべき事由があったのかもしれませんが、それは委員会設置会社という制度に問題があるのではなく、単に「見る目のない」社外取締役を選任してしまったがためではないでしょうか。結局、役員候補者の層が薄く、十分な教育と経験を受けた人材が育っていないからとも思えます。

それよりも気になるのは、「株主利益を重視すると長期の技術開発ができなくなる」という節です。長期的な利益につながるのであれば、セカンダリー市場はそれを織り込む機能がありますが、それはせいぜいエクイティ・リスク・プレミアム8%前後の話ではないかと思います。一か八かの技術開発を広く公開市場で資金を募ってやろうというのは、技術者として虫がよすぎるのではないかと思います。

確かに、高度成長期の日本企業では取引先や銀行に支えられて、そうした無謀とも思える技術開発が許されており、それが競争力のある製品につながったということも否定できないと思います。しかし、それは日本の文化に根差していたわけでもなんでもなく、たまたま戦後過小資本・過小資源だったので特定の産業に集中的にリソースを投入し、長期間固定することが是認されただけではないでしょうか。

本来、当たるも八卦当たらぬも八卦という開発は、そのリスクを認識して資本を投じてくれるエンジェルやベンチャーキャピタルの協力を仰ぐべきものだと思います。仮にNISAやスチュワードシップコードをはじめとした長期投資の流れが日本にも定着したとしても、セカンダリー市場が取れる長期的リスクは本来的に限定されているはずです。その認識がないと、「長期投資家なのだから無謀な開発もさせてくれ」という技術者の傲慢を生むのではないかと危惧します。

こうした問題はそもそもリスク資本の層が薄いことに起因しています。貯蓄から投資へと言いますが、デットからエクイティに流れても、エクイティがセカンダリー市場ばかりでは、リスク特性に応じた資本の提供ができません。その意味で、同時並行的にエクイティ市場の多様化も図らねばならないと思います。

現在それを妨げているのは、資本コストやキャピタルアロケーションの発想がなく、全ての開発を自社で行おうとする大企業の経営行動だと思います。本来上場企業として取れるリスクはその社会的責任に照らしても限定されていて、それ以上のリスクを取る場合にはスピンオフをするなり、MBO/EBOさせるなりの組織的な柔軟性が必要ではないでしょうか。エクイティ市場の多様化・多層化が進まないのは、大企業から売り物が出てこないからではないかと感じています。

 

よろしくお願い致します。

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