液晶テレビ事業での巨額損失について思うこと-門多 丈

実践コーポレートガバナンス研究会(http://icgj.org)の門多代表理事のブログ記事を転載します。

先期の決算では液晶テレビ事業関連でソニー、パナソニック、シャープが、液晶テレビ事業関連でそれぞれ数千億円に上る巨額損失を計上した。大型薄型テレビなどでは、日本企業が技術を先導したといわれる。グローバル化の中で韓国サムソンなどに敗退したのには、薄型テレビがコモディティ化する中での事業戦略など企業経営の失敗である。これには、1) この分野での日本企業の数の多さ、2) 事業戦略のあいまいさ、3) 巨額設備投資の効率の問題、があると思う。

韓国のサムソンなどとのグローバル競争に日本企業が負けたのには、日本のこのビジネスへの参入企業の数の多さがあると思う。国内各社が自己の考えで事業、商品・技術開発の戦略を立て、巨額な設備投資をばらばらに行い、グローバルに競争しようとしたのである。日本の製造業には重電機やITメーカーが家電も造っているような、百貨店的な企業経営の問題があった。1990年代から「選択と集中」と言われて来たたが、抜本的な事業見直しや企業の統合・再編が行われてこなかった。この対応の遅さには各企業におけるコーポレートガバナンスの欠如がある。グローバルな競争関係を見て統合や合併を取締役会で真剣に議論すべきであった。社内役員ではいろいろな理由でこのような議論はなかなかできない。社外取締役が「外の目」で事業からの再編や撤退と合併を、株主を代表する立場でこの議論を提起するべきであった。

コモディティ化の流れの中で、各社の事業戦略には間違いがあり不徹底もあった。ソニーは過去のブランドへの執着から完成品製造にこだわり、競争力のある画像処理技術やコンポーネントのビジネスに特化できなかった。自らのアイデアや技術の強みを生かし、アップルのiPhone,i Pad開発に対抗するような試みもしなかった。パナソニックは当初大型薄型テレビではプラズマに注力し、液晶陣営の画面大型化の流れの速さを読み切れなかった。遅れて参入した液晶型テレビのビジネスでの差別化もできなかた。シャープは液晶薄型テレビのコモディティ化の流れにもかかわらず、大型液晶パネル製造の大量生産を国内で始めた。

ソニーは韓国メーカーと共同しての液晶製造を目指したが、効率化には失敗した。パナソニックはプラズマテレビ用パネルのために投資した国内工場の操業を停止した。シャープは国内での大型液晶パネル製造への巨額投資をし行き詰まった。この失敗からシャープは液晶テレビ事業の実質的な支配権を、台湾の鴻海(ホンハイ)に譲った。

このような事業展開や巨額投資については、いかなる戦略の中でどのような選択肢の中で経営判断し意思決定するのかの説明義務が経営陣にはある。取締役会にはその審査・監督義務があり、それを効果的に遂行するためにはやはり社外役員の参画が必要と思う。

グローバル化の中で市場構造や競争環境は激変している。消費者のセンスも多様化してきている。このような構造の変化を敏感に察知し、適切な事業と商品・仕様戦略を構築し、設備投資などの経営資源の効果的な配分を行うのが企業経営である。そのためには取締役会はリスポンシブな(変化に敏感な)ものであるべきであり、社外役員の「外の目」がなくては今や機能しないと考える。

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