濱田眞樹人氏:会社法制の行く末を見極めてから、上場規則を整備すべきではないのか

ハリー・ウィンストン・ジャパン代表取締役の濱田眞樹人氏がJUSCPA(Japan Society of US CPAs)のウェブサイトに東京証券取引所「証券市場の信頼回復のためのコーポレート・ガバナンスに関する上場制度の見直しについて」に関して意見を投稿されました。

2012.04.06
東京証券取引所「証券市場の信頼回復のためのコーポレート・ガバナンスに関する上場制度の見直しについて」に関して

  東証は、2012年2月28日「証券市場の信頼回復のためのコーポレート・ガバナンスに関する上場制度の見直しについて」を公表して、4月26日まで意見募集をしている。2012年5月を目途に実施するとしている見直しの内容は、独立役員に関する情報開示の拡充が主なものであり、独立役員が取引先やその出身者の場合、他社と相互就任させている場合、寄付を行っている先やその出身者の場合等の開示を強化すること、独立役員が機能するための環境整備に努めること、そして、業務の適正を確保するために必要な体制の構築・運用である。今回の見直しの背景として東証は「昨年、上場会社の経営者による企業価値の重大な毀損行為が相次いで発覚したことを受け、これらを防止して企業価値の向上に資すべきコーポレート・ガバナンスが機能していなかったとして、我が国証券市場に対する内外の投資家の不信感が高まっています」としている。
  大きな事件が頻発し、危機感が高まっているのは理解できるが、現在、法制審議会会社法制部会では会社法制におけるコーポレート・ガバナンスの在り方が議論されており、2011年12月の「会社法制の見直しに関する中間試案」に関してパブリック・コメントで意見が問われたところである。この時点において、東証の見直し案の通り開示の規則だけを早急にパッチを当てる様に強化する緊急性があるのかが疑問である。もちろん、「独立役員が機能するための体制」すなわち内部統制を「適切に構築・運用する」ことを今更ながらに求める部分を除いてである。
  在日米国商工会議所(ACCJ)は、東証の見直し案に3月29日付で意見書を提出した(http://www.accj.or.jp/doclib/pc/TSEpc.pdf )。ACCJは「更なる情報開示を求め、独立役員が機能するための環境整備を図るという本見直し案に賛同」するとしながら、コーポレート・ガバナンスの改善と投資家の信頼の回復を確保するためには、現在の上場制度が独立役員1名を変更しておらず、たった一人の独立役員(決議権を持たない監査役も含む)の存在のみでは証券市場の信頼回復を確保することは不十分であると意見を表明している。また、内部・執行取締役の自己利益と株主の利害が対立する際に、独立した社外取締役のみに構成される特別委員会で重要な意思決定を行えるような手順や内部取締役についての役員職務に関する知識水準の情報開示を求めることなどを提言している。ACCJの指摘は極めてもっともである。しかしながら、この時点での東証とACCJの議論の擦れ違いの様なものに違和感を持つのは私だけではないはず。やはり、会社法制の行く末を見極めてから、上場規則を整備すべきではないのか。

JUSCPA濱田眞樹人

リンクは以下になります。

http://www.juscpa.org/journal/j20120406.html

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